91話 ページ12
──多分仲良くはなれねぇだろうな。
さっきのイザナの言葉が脳裏をよぎる。
「お前ボロッボロじゃんかよ！」
こういうことか、と思わず頭を抱える。
「知った仲か？」
竜胆君と交代して自分を背負う鶴蝶がそう聞いてきた。
あれから質問攻めしてくる灰谷兄弟をやり過ごし、何とか埠頭内の目的地へ。
そこにいたのはイザナの言う通り赤い特服を着た人達が計7人。
名前はイザナに圧を掛けられ無理矢理その場で覚えた。
その際に斑目君と多少いざこざがあったが、記載する程ではないので割愛させてもらおう。
同じく灰谷兄弟と鶴蝶も多少自分のことでいざこざがあったが、こちらもすぐ済んだので割愛。
そこまではまぁいい。しかしそこから先が問題だった。
知った顔──片方は奇妙なことに会ったこともないが──が7人の中に2つ。
半間君と稀咲鉄太。
体感としては30秒くらい。お互いに何で？という顔をして固まった。
これが漫画だったら互いの頭上に大量の？が描かれていたことだろう。それくらい情報処理ができていなかった。
しかしその沈黙の時間はボロボロの自分を見て大爆笑した半間君により呆気なく壊された。
……それにしても半間君浮気癖酷くね？会う度違う特服着てる気がするんだけど。
脳内での回想もそこそこに、鶴蝶の質問に答える為に今度は口を動かす。
「ノッポの方はまぁ……割と。ちっちゃい方は情報として名前くらいは知ってる程度」
「じゃあ稀咲だけやれ」
「稀咲鉄太だ」
「黒脛A」
名前を言うだけの淡白な自己紹介。
稀咲鉄太……半年前くらいに翔奏が注意しろって言ってた奴。
それと同時に翔奏の力を利用したがっている奴でもある。
「神凪は来ねぇのか？」
「来ない。翔奏は滅多に外に出ないし、面倒事に巻き込みたくないからあまり出させたくない」
君がいるなら尚更、とは言わないでおいた。その様子じゃ未だ翔奏の自宅は把握できていないのだろう。
すっと稀咲君の目が細くなり自分に冷たい眼差しが向けられた。
自己紹介が一段落したことを確認したイザナは手を叩く。
ぱきりと空気が一気に張り詰めた。
「じゃあ始めんぞお前ら。電話して神凪叩き起こせA」
「……？今日幹部紹介だけじゃないの」
「んなわけねぇだろ。今からすんのは東卍潰しの計画だ」
イザナはそう言ってニヒルな笑みを浮かべる。
「東卍潰し」
「そ。東卍潰し」
その瞳にはよく知る闇が1つ。
脳裏をよぎった姿は、そっと消し去った。
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作者名：雨野夜都 | 作成日時：2021年11月28日 17時
