旅の再スタート1 ページ40
雨が小屋の屋根を叩く。
その音は次第に強くなっている気がする。
りおは管理小屋の窓から外の様子を伺った。赤井はまだ戻らない。
「ずいぶん強く降ってきちゃったわ。きっとずぶ濡れで帰ってくる。
囲炉裏の火を少し大きくしておかないと…」
薪をいくつか足し、部屋を暖める。
湯を沸かし、冷えた体を少しでも温められるようにと、準備をして待っていた。
やがてバシャバシャと走る足音がこちらに向かってくることに気付く。
ガラッ! とドアが開くと、ずぶ濡れの赤井が中に入ってきた。
「ふ〜。途中で降られてしまった」
「秀一さん! おかえりなさい。さあ、早く火のそばへ」
りおはタオルを取り出すと、赤井に手渡した。
赤井はタオルを受け取り髪を拭く。
ワシャワシャと拭いた後は、ボタンを外して肌に張り付くシャツを脱いだ。
りおはシャツを受け取ると、壁際にあったハンガーにかけた。
「ズボンもずぶ濡れね…」
「ああ。仕方がない。乾くまでパンツ一枚で過ごすか。
りお、そこの毛布を取ってくれ」
「赤井パンイチ…」
「りお…寒い冗談だぞ」
ちぇー面白いと思ったのに…。
ブツブツ文句を言いながら、毛布を手渡した。
「上手くブルーシートで被うことは出来た?」
囲炉裏の火を調整しながら、りおは訊ねた。
「ああ。とりあえず急ごしらえではあったがな。
後は野生動物に荒らされなければ良いんだが…」
毛布に包まり、マグカップの白湯を飲みながら赤井は答える。
「そ、そうね…」
赤井の言葉にゾッと鳥肌が立つ。心なしかりおの声が震えた。
「すまん。余計な事だったな」
「え? あ、ううん。大丈夫。気にしないで」
最近赤井はりおの変化に敏感だ。
「そういえば…りおはまだ、赤い色を見ても…ダメかなのか?」
昴の姿で切り付けられた強盗事件をきっかけに、りおは血だけでなく《赤い色》にも過剰反応を起こしていた。
「ううん。《赤い色》はもうほとんど大丈夫。踏切のライトも赤い傘も。今では平気よ」
「だが血液は…?」
「そうね。赤い物なら大丈夫だけど、赤い液体のようなもの…
血液を連想させるものは…ダメかな…。警察官がこんなんじゃいけないよね」
「仕方ないさ。それは俺にも責任がある」
すまなかったな…と小さく謝罪の言葉をつぶやいた。
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時