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アンバーの過去3 ページ34

 「はい、どうぞ」
りおはチョコレートを指でつまむと赤井の口元に差し出した。
赤井はニッと笑うと、あー…と口を開けてパクリと食べた。
「美味しいですか?」
「んー。うまいよ。味見してみるか?」
そう言うが早いか、赤井の顔がりおに近づいた。
チュッと音がして、すぐに唇は離れた。

「……」

 「りお、チョコレート好きじゃないのか?」
「好きだよ! 好きだけども! 普通に食べるわよ! こんな照れくさいの…
味なんて分かるわけないでしょ!」
りおは真っ赤になって反論した。
アンバーの瞳が照れているのをごまかすように揺れている。
その瞳の色を見て、赤井は昼間聞こうと思っていたことを思い出す。
今なら…聞けば話してくれるだろうか。


 「なあ。一つ…聞いても良いか?」
「何ですか?」
「昼間『両親の事あまり覚えていない』って言っていたよな。詳しく聞かせてくれないか。
あ…いや、りおが嫌なら良いんだ。ただ…俺は…知りたいと思ってしまっただけで」
「良いよ」
りおは優しく微笑むと、視線を囲炉裏の火へと移した。




 「私の両親は、私が9歳の時に亡くなったの。自動車事故で。
対向車線を走ってきた車が、中央線をはみ出して正面衝突したの。
後部座席でジュニアシートに乗っていた私は助かったけど、両親も相手の運転手も即死だった」
「事故の原因は?」
「相手の運転手の居眠り運転」
「そうか…」
もしかしたら、その事故でりおも死んでいたかもしれないと思うと背筋が寒くなった。

 「事故のショックでね、私1年くらいしゃべらなくなっちゃったんだって」
「え?」
「たぶん、今思えば失声症だったのかもね。
実は未だに事故の時の記憶も両親の記憶も、ほとんど無いの。
少なくとも、9年間は育ててもらってたはずなのにね…」

 「?! そうなのか…。事故後はどうやって生活していたんだ?」
「父方の祖父母に育ててもらったわ。その時に聞いたの。
両親は警察関係の仕事をしていたって。
でも、祖父母も高齢で…。祖父は私が高校の時に。祖母は私が警察学校に入ってすぐに亡くなったの」
「他に家族と呼べる人はいないのか?」
「いないわ。兄弟もいなかったし。母方の祖父母は私が生まれる前に、相次いで病気で亡くなったらしいから」

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設定タグ:名探偵コナン , 赤井秀一 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時

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