運命の歯車4 ページ17
「組織同士の抗争を生んでしまったわ。
エンジェルダストを使った計画を潰し、幹部の右腕と言われる男を死に追いやった。
お互いに組織の立て直しをして、再び激突する時が来る。
これほどの大きな組織同士がぶつかれば…ケンバリの時のような…」
そう言ってりおはうつむいた。
りおが黒の組織の前にいた組織「ケンバリ」。
そこの陥落直前は、組織の構成員、NOC、地元警察、そして軍が入り乱れ、血を血で洗う激戦となった。
りおはそこで多くのNOC仲間を失ったのだ。
ジンやベルモット達が仲間を増やす名目で潜入し、日本に連れ帰っていなければ、おそらくりおも生きてはいなかっただろう。
「あんな戦いが日本で起きたら…」
りおが唇を噛み締めた。表情は今にも泣き出しそうだ。
「思いつめるな。俺がいる」
昴がりおの肩に手を置く。
「いや、皆いる。お前が今まで守ってきた人たちが。
みんなお前の仲間だ。
ボウヤも降谷くんも風見くんも、博士も新出先生も…」
昴はりおをそっと抱きしめた。
「確かにどちらも大きな組織だ。だが所詮、恐怖と力で繋がったもの同士。
いざとなれば簡単に裏切る。ケンバリのNO2だったサカモトのようにな」
昴の目は見開かれ、優しいペリドットがりおを見つめる。
「だが、俺たちは違う。俺たちは信頼でつながっているんだ。
そしてそれは、連鎖して今も大きくなっている。
今もお前と繋がっている中国警察の協力者、その上司も。藤枝も。
お前が守ろうとすればするほど、どんどん連鎖して大きくなる。
俺を信じろ。みんなを信じろ。お前はひとりじゃないんだ」
昴の言葉にりおはうなずいた。
下を向いていた顔を上げ、昴を見る。
「昴さん。ひとつだけ約束して」
「ん? なんだ?」
「絶対に死なないって約束して。冲矢昴も赤井秀一も。絶対に死なないって」
かつて赤井が破ってしまった約束。
今ここでもう一度約束して。
りおの目がそう訴えていた。
「ああ。今度こそ絶対に守る。だからお前も約束してくれ。
絶対死なないと。俺たちはずっと一緒だ」
「うん。守る。守るよ。絶対に」
二人は強く抱き合った。
二人を取り巻く大きな流れが、今ゆっくりと…だが確実に動き出そうとしていた。
おわり
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時