心は丸く磨かれて2 ページ2
「なるほど。よくわかった」
藤枝はそう言うとさくらの方へ向き直る。
「このままでは一生声が出るようにならんぞ」
『え?』
「それはどういう…?」
昴が驚いたように聞き返す。
「ラスティー、お前は感情を表に出さなすぎだ。人に気を使いすぎ。
負の感情はその時々で昇華しないと、お前が思っている以上に心に負荷をかけるんだ。
感情を押し殺す時、胸が苦しくなったり痛くなったりしないか?
その苦しみ、痛みを表に発散していないだろう?
それが失声症の原因だ。
そして声を失ったことで、さらに感情を表に出せなくなった。
泣き叫びたくても叫べない。違うか?」
図星をつかれ、さくらは目を背ける。
その様子をみて「アタリだな」と藤枝はつぶやいた。
「いいか、よく聞け。
このままでは声が戻らないばかりか、体の不調が別の形になって出ることだって考えられる。
目が見えにくくなったり、耳鳴りや頭痛、吐き気、手足のしびれ…あげたらキリがない。
すでに頭痛や吐き気は…あるんだろう?」
藤枝は目を合わそうとしないさくらの顔を覗き込んだ。
「…エミリーと同じだな」
「「?!」」
昴とさくらは藤枝の言葉に驚いた。
「アイツも俺と付き合うようになって、裏の世界にドップリ浸かっちまった。
頭のいいやつだったから、俺の仕事をすぐに覚えた。
俺にとっては公私共に最高のパートナーだった」
懐かしむ様に話す藤枝の顔がわずかに曇る。
「だが、心の優しい彼女にとって、武器商人のサポートってのはかなりの負荷をかけた。
善悪の狭間で、彼女は神経をすり減らしていった。
自分たちの売った武器で人が死ぬ。それが彼女の精神を蝕んでいった」
そこまで話すと藤枝は立ち上がり、窓辺から外を見た。
「お前と同じ失声症になったのはガンになる3年くらい前だ。
なかなか声が戻らず、次第に吐き気や頭痛、耳鳴りなどに悩まされた。
そうやって体を蝕まれ、常に体調を崩していたから気付けなかったんだよ。
ガンの発症にな」
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作者名:aki | 作成日時:2020年1月3日 13時