すれ違う二人１ ページ8
安室は一旦帰宅しポアロへ。
さくらは工藤邸に行くことにした。
「おそらく近いうちにラボに呼ばれると思います。
レポートが見つからず、藤枝に焦りが出てくると思いますので」
安室の言葉にさくらは頷いた。
「じゃあ、また」
ふたりは米花町の駅で別れた。
リンゴーン
工藤邸の呼び鈴が鳴る。
昴がインターホンに出ると、画面にはりおの姿があった。
慌てて玄関のドアを開ける。笑顔のりおがいた。
「お帰りなさい」
「ただいま帰りました」
そう答えたりおの声を聞いて昴は驚いた。
「どうしたんですか？ すごい声…」
問いかけながら、昴はりおの荷物を手に取る。
「ホテルと飛行機の空調にやられました…」
ごほっ！ごほっ！ごほっ！
声のみならず咳もひどい。
「なにか温かいものでも入れますね」
昴はキッチンへと向かった。
(随分ひどい声になっていた。本当に空調のせいだけだろうか…？)
以前失声症になったこともあるので心配になる。
ホットミルクを持ってリビングに戻った昴はそれをテーブルに置く。
「飲む前に…ハグをしても？」
りおに問いかけた。
「もちろん」
りおは立ち上がると、昴に抱きついた。
昴もりおを抱きしめる。
「ただいま。昴さん」
「おかえり。りお」
数日ぶりのハグ。思わずお互い相手にすり寄った。
「ん？ りお、泣いたのですか？」
目元に触れながら昴が訊ねた。僅かだが赤く腫れている気がする。
りおは何も言わず、自分の顔を昴の胸に押し付け、抱きしめる手の力を強めた。
「バーボンに何かされたワケではないのですね？」
その問い掛けにははっきり頷いた。
昴は少し安堵する。
「話したくなったら話してください。
とにかく温かいものを飲んで、少し休みましょう」
さくらをソファーに座らせ、飲み物を勧めた。
ホットミルクを飲むと、りおはソファーで眠ってしまった。
昴はブランケットをそっと掛けてやった。
りおがＫ国に行っている間、昴はオドゥムがなぜエンジェルダストにこだわるのか、秘密裏に調査していた。
まだ、オドゥムという組織の実態が見え始めたばかりだが、もしかするとそこに大きな陰謀が隠されているのではと感じ始めていた。
近いうちに沖矢昴の姿ではなく、FBIの赤井秀一として、正式に降谷零と会わなくてはならないかもしれない。
今はただ、何かの間違いであって欲しいと願わずにはいられなかった。
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作者名：aki | 作成日時：2019年11月18日 13時
