苦しい胸の内3 ページ7
藤枝についた嘘。
どうしてもさくらの心に影を落とす。
エミリー、あなたのところに藤枝を帰すにはどうしたら良いの?
あなたは待っているんでしょう? 彼の帰りを。
そのために私が出来ることは何?
秀一さん、私どうしたら良い?
苦しいよ。助けて…
自分の体を抱きしめるように身をかがめ、声もなく泣いていた。
「また泣いているのですか?」
背後から声がした。安室が立っている。ゆっくりとさくらに近づいた。
「ひとりで抱え込まないでください」
「あなたは既にたくさん背負っているわ。これ以上背負わせるわけには…」
全てを伝えきる前に抱きしめられた。
「あの時、藤枝にはああ伝えるしか無かった。
結果的に今は嘘をつくことになったが、あなたの気持ちは伝わったはずだ。
だから僕たちを信用してくれた。
いつかそれが、あの二人にとって良い方向に向かうと信じよう。
君のしたことは間違っていない!」
強く抱きしめながら、安室はさくらに伝える。
そうであって欲しい。
二人に最期の別れの時間を…。
そう強く思いながら、さくらは安室にしがみつき泣いた。
そのまま長い時間、屋上のベンチに座っていた。
さくらは空を見上げ、ずっと赤井の事を考えていた。
死にゆく者…残される者…どちらも同じように辛い…
そんなことをぼんやり考えていた。
翌朝早く、安室とさくらは荷物をまとめ、ホテルをチェックアウトした。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時