エミリーを藤枝に1 ページ29
藤枝はラボで暴れたあと、組織のアジトにある一室に閉じ込められている。
ベルモットが藤枝に会いに来ていた。
藤枝は彼女を見るや否や、
「ラスティーに騙された! あの女を許さない!!」と憎しみをいたるところにぶつけた。
おかげでそばにある椅子やテーブルは、全て無残な姿を晒している。
その様子にベルモットはため息をついた。
「ちょっと静かにしてくれないかしら? あなたは彼女のことを知らなすぎるわ。
知りもしないで彼女を侮辱するなら、私が許さないわよ」
「何を知らないというんだ!? あの女は俺をだましてこの組織に引き入れた!
どうせヤツはレポートの在処をギムレットから聞いて知っているんだろう!
知っててその上で探し回る俺の姿を嘲笑っていたのさ!!」
怒りに任せて暴言を吐く藤枝を、ベルモットはキッと睨んだ。
「あの子はK国でエミリーと会い、彼女に時間がないと知ったのよ。
一刻も早くあなたを彼女のもとへ帰そうとしていたわ。
ラスティー自身はレポートが既に存在しないと推理していたから、その証拠を掴もうと必死だった。
レポートが無いと分かれば、あなたもジンも諦めると思ってね。それこそ、寝る間を惜しんで
探していた…」
藤枝はそれでも、ベルモットの話を半信半疑で聞いていた。
「エミリーが危篤だという一報を聞いて、あなたのK国行きをジンに進言したのもあの子よ。
あの子、オドゥムの刺客に襲われて腹部に大ケガをしていた。
それを押してあなたとK国に行くつもりだったの」
「ッ?!」
その言葉に藤枝は驚く。
そういえば自分が彼女に暴力を振るったとき、彼女の服に血のような赤い痕があった事を思い出した。
「あなた、ラスティーになんて言われてここに来たの?」
少しおとなしくなった藤枝に、ベルモットは問いかける。
「二人が…生きられる…選択を…」
「それって、『私の領域内だったら、二人に最期の時間を…』ってことだったんじゃないかしら。
もしあなたがオドゥム側にいたままだったら、彼女の危篤を教える人間がいた?
彼らにとってエミリーは大事な人質。その人質が死にそうだなんてあなたに教えると思う?」
「?! そ、そういうことだったのか?! そういう意味で…」
初めてラスティーの本心を知り、藤枝は動揺を隠せない。
「お、俺は…なんてことを…」
藤枝の後悔は涙となって零れ落ちた。
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作者名:aki | 作成日時:2019年11月18日 13時