まさかの巡り合わせ ページ14
「えっと....」
ひっくひっくと泣きじゃくり、一向に俺の袖から手を離そうとしない子供。
そんな一切の気配も無く隣にいたこの子に、俺は内心超焦りまくっていた。
(待て待て落ち着け....!)
これはどう見ても迷子だよな?
誘拐しちゃってたとかじゃないよな!?
てかいつから後ろにいたんだこの子!?
(何か色々気になる!けど!)
その前に涙を止めてやるのが先だ。
泣いてる子を放置とか元兄の立場からして絶対出来ないし。下の子なら尚更。
という訳で、今はこの子に泣き止んで貰う事を第一に考えよう。
俺は一度大きく深呼吸をすると、目に涙を浮かべる子供の頭にそっと手を乗せる。
「.....?」
「大丈夫だから」
そして顔を上げた子供に出来るだけ優しく笑いかけ、次いで同じ目線になるよう、俺はゆっくりとその場に片膝を着いた。
手元の工具箱を開き、先程貰ったお菓子の包みに手をのばす。
「ちょっと待ってろよ....」
それからその子に見られないよう両手を後ろに回せば、向こうは泣くのも忘れ俺の手に夢中になっていて。
「はい、どっちだ!」
「え....」
閉じた状態の両手を突き出せば、子供は困ったように俺の両手を交互に見やる。
どうすればいいか分からないんだろう。
「好きな方選んでごらん」
背を押す形で伝えてやると、子供は少し悩んだ末に、小さな手で恐る恐る俺の右手を指さした。
「こっちでいいか?」
「...うん」
「よし....じゃ行くぞ。せーのーーー」
俺の問いかけにしっかり頷いたのを確認し、そこから掛け声に合わせる事数秒。
「わぁ.....!」
俺の右手に乗った金平糖やキャラメルの小さな山を見て、子供は泣いてたのが嘘のように今度はきらきらと目を輝かせ始めた。
そして広げた手を再度握ると、俺はその子の前にそれを差し出す。
「はい、これ上げるからもう泣かない事。分かった?」
「...うんっ!」
そして約束と言ってその子の手の上へと乗せれば、子供は「ありがとう」と明るい笑顔を見せてくれた。
どうやら無事泣き止んだらしい。
「よしよし、偉いな」
拭った手で頭を撫でながら、俺は続けて子供に尋ねる。
聞いた話だと、なんでも勝手に一人で家を出てきてしまったらしい。
「なるほどな....」
となると家探しからだが、俺はこの町来たばっかだしなぁ。
(せめて誰か知ってる人にでも聞ければ....)
そう思っていた時だった。
「あの、大丈夫ですか?」
ーーー赤みがかった黒髪の子供が、俺に声をかけてきたのは。
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みかん - もう公開はしないのでしょうか…凄く見たい…また公開にするような機会があることを願ってます!非公開にした理由が深いのなら作者様はこのコメント無視して頑張ってください!! (2022年1月9日 12時) (レス) id: bc2584c695 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 素晴らしいの一言に尽きます...素敵な作品で楽しく読ませていただきました。最新頑張ってください。陰ながら応援してます...(´∀`) (2020年10月18日 22時) (レス) id: 000b312b5b (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - まだ(# ゚Д゚) (2020年3月10日 17時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 続きまだ? (2020年2月29日 20時) (レス) id: 4d4917b86c (このIDを非表示/違反報告)
佐藤悠真(プロフ) - 微笑ましいに尽きますね。いつもホワホワしながら読まさせていただいております。更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年2月18日 0時) (レス) id: 44efc3fddb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Syu | 作成日時:2020年1月16日 21時