２１.二人旅 ページ24
私が部屋に戻ると、扉のすぐ側でギムレーは腕を組み、壁にもたれかかって立っていた。
「遅かったね」
「あはは……ちょっと色々ありまして……」
私がそう言うと、ギムレーは不機嫌そうに顔をしかめた。
「またあの“器”か……」
「え？」
ギムレーが何か呟いたのだが、雨の音の方が大きく、聞き取ることは出来なかった。
「何でもない……それ、まだ持ってたんだね」
ギムレーは、私が手に持つ魔導書を指差して言う。
「あ、うん。キミからもらった、初めての贈り物だからね」
「……ふ〜ん」
ギムレーはそのとき、何故かフードを被った。
それも、口元辺りしか見えないほど深く。
どうしたんだろうか？
「うわ！」
突如、私の体がウワッと浮いた。
「相変わらず、品のない悲鳴だね」
声がした方を見れば、顔のほんの数センチ先にギムレーの顔があった。
「どういう状態？これは」
「お姫様抱っこっていうやつだよ。人間の女はこういうのが好きなんじゃないのかい？」
キョトンとした顔で私に言うギムレー。
お姫様抱っこだというのは分かるよ。分かるんだけど……。
「何で私に……？」
「喜ぶと思ったんだよ」
「恥ずかしいので降ろしてください」
流石に恥ずかしいです、本当に。
その上、ギムレーとの顔の距離もかなり近い。
徐々に私の顔の温度が上がっていくのが分かる程度には、私の顔は赤くなっていた。
そんな私の様子を見て、ギムレーは面白いものでも見たように、クスクスと笑う。
相変わらず、色気のある声だなぁと思った。
「さて、行こうか」
その声で、私は降ろしてもらえないことを察して、それ以上は何も言わなかった。
ギムレーは私を抱えたまま窓に近づき、窓に片手をかざす。
すると、窓が勢いよく開き、外から大量の雨が部屋に入ってきた。
いつの間にか、雨だけでなく暴風まで吹いていて、とてもじゃないが、外に出られる状態ではない。
「大丈夫だよ」
不安げな表情をしていたからか、ギムレーが私にそう言ってくれた。
「僕は……君の半身だからね」
その言葉に、私は嬉しさが溢れた。
キミと、本当の友達になれたと思ったから。
「ありがとう」
この言葉は、きっとキミには届いていないだろうけれど、代わりに私は、ギュッとギムレーにしがみついた。
そんな私の行動に、最初は動揺していたギムレーだが、やがて微笑み、開いた窓の外へと飛び出した。
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005(プロフ) - とても感動しました！すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした！ (2018年4月21日 21時) (
レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点！ (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リムス x他1人 | 作成日時：2018年3月1日 22時
