１８.哀しさは ページ20
私の腕を掴んだのは、ギムレーだった。
「ギムレー、どうしたの？」
私の問いにギムレーは答えず、ただ私を見据えるだけ。
「もう……ほら、お風呂入って。風邪ひくよ」
何も喋ろうとしないギムレーに、さすがにムッとした私は、ギムレーに服を持たせて風呂場に押し込む。
しばらくすると、風呂場からザバァンと音が聞こえ、それ以降はずっと静かだ。
溺れてはいないだろうか？
「ギムレー、大丈夫？」
だが、中から返事はない。
まさか、本当に溺れたんじゃ……！
私の脳裏に風呂の中に沈むギムレーが浮かび、慌てて風呂場のドアを開けた。
するとそこには、服を着たまま風呂に浸かるギムレーの姿があった。
「何してるのキミは！」
私はギムレーを風呂から引き上げて言う。
「……寒い」
「そりゃあ服を着たまま風呂に入れば寒くもなるよ」
「でも……」
ギムレーはそこまで言うと、私に抱きしめてきた。身長差から、私はギムレーの胸に顔を突っ込む形になる。
「君といると、温かい」
そのときの彼の表情は、とても優しかった。
「君がいないと、胸が寒いんだ」
迷子の子供のような、不安げな表情で言う。
「何で……僕は君のことを考えたんだろうね？君はもう、とっくの昔に捨てた駒の筈なのに」
ギムレーの腕の力が増す。
それと同時に、震えていた。
表情は相変わらずなのに、その仕草は、まるで何かに怯える子供のよう。
「……ギムレー。私はキミに、言いたいことがあったんだ」
私はそう言い、ギムレーの腕から抜け、真っ直ぐに彼の目を見る。
師匠たちと共に過ごしたこの日々で、キミに伝えたいことがあるんだ。
「キミは自分を邪竜と呼ぶけれど、私はキミを邪竜とは思わない。もうこれ以上、自分の存在を縛らないで」
邪竜ギムレーとしてではなく、ただのギムレーとして、生きて欲しい。
「我は、邪竜として生きることを望まれた。そんな僕を、何者かが必要としてくれるとでも思うか？……ふざけるなよ、虫けらが！」
私が言うと、ギムレーは忌々しげに言う。
「そんな顔で……我を、僕を哀れむな！」
「哀れんでなんかない！」
彼に負けないように、私は言う。
「私はキミが必要だよ！邪竜でも、ギムレーでもないキミ自身が！私と友達になってくれた、キミが大切なんだよ」
だからもう、邪竜であることに縛られないで。
「キミがいないと、寂しいよ。だってキミは、私の友達だから」
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005(プロフ) - とても感動しました！すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした！ (2018年4月21日 21時) (
レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点！ (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リムス x他1人 | 作成日時：2018年3月1日 22時
