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木の実を手際よく剥いてくれたAの口にお礼代わりのモモンのかけらを差し込みながら、のこりの部分をほかの実と一緒にヌメルゴンに投げてよこす。ぽい、ぽい、ぽいと片手で三連続投球すれば、どれも綺麗にカーブを描いて口の中でナイスキャッチ。キバナチーム随一の応援担当として、かなり張り切っている。
火を入れた後の工程はお互いのポケモン達がそれぞれの鍋を囲んで、予想以上に白熱しながら進められた。火の使い方はカブさんの方にが長けているが、体力勝負の大鍋かき混ぜとまごころはオレの方が上だという自負がある。Aは目をキラキラさせながら、フライゴンとキュウコンと一緒に二つの大鍋を行ったり来たり観察していた。
どちらもダイオウドウ級で並べられた大皿はいつもより二つずつ多く、彼女とドラパルトはオレ達の間に座って、人とポケモンの視線を一心に受けながら少しやりにくそうにスプーンを進めていた。
「なにこれ、うま」
「ふふ、ぼくの故郷の味を分かってくれたかい」
「同じカレー味なのに、すげー食いやすいですね。野菜の味が分かりやすいっていうか。Aはど、どうした!?水か!」
「は、から、いです、涙でそう、」
「やりすぎたかー。ごめん、ナナシの実齧る?少しは口ん中マシになるから」
「カレーを食べなれてるぼくにはキバナ君のも十分美味しいけどね。やっぱりAにはちょっと早かったね」
「うう…みんな、キャンプの時はこれを食べるんですか?」
「そう。最近流行ってて、いろんな味があるから、もちろん辛くないのもいっぱいあるから!今度またおいしく作るよ」
「楽しみにしてます…、木の実ってこういう風に使えるんですね、知りませんでした」
「A君は料理は、本を見るのかな?」
「そうですね。でもあまりレパートリー、多くないので、すぐ同じようなものになってしまうのが最近の悩みです」
「ふむ。どうかなキバナ君。彼女を魔性のカレー道にご招待するというのは」
「大賛成ですカブさん。次は負けませんよ」
勝負の軍配はカブさんのベテランの観察力に上がった。"美味しかったけど、口がヒリヒリして疲れる"とは控えめに洗った大皿を返却しながら言われた言葉。ドラパルトは食いっぷりからしてオレの方を気に入ってそうだったから良いものの、絶対に次回リベンジマッチしようと固く心に決めた。
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2022年10月1日 21時