Astilbe Ⅱ (ページ10)

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白岩瑠姫ページ10

好きだ、と言えたら楽なのに

「…き、瑠姫ってば！」

「え…なに？」

「なに？じゃないでしょ！今日は一緒にカフェに行くって約束でしょ？」

「あ、ああ…そうだった」

放課後、ぼーっとしているとAに話しかけられた

今日はカフェに行こうって言われてたんだった

「早く行こ！」

そうやってはしゃぐAはやっぱり可愛いなと思う

幼馴染のAとはもう何年の付き合いになるのだろう

Aを好きになって、何年経つのだろう

「瑠姫とお出かけするのなんて久しぶりだね！」

「…そうだな」

人前に立ちたい

ステージに立ってたくさんの人を笑顔にしたい

そう思って幼い頃からそういった活動をしてきた

デビューするためにレッスンを重ねる日々

学校とレッスンで俺の毎日は終わっていた

今日、たまたまレッスンが休みになることをAに伝えると、たまには一緒にどこかに行こうと言われて今に至る

「今日は私が瑠姫におすすめのものを注文します！」

カフェに入った途端、Aはそう言って慣れた感じで注文と会計をさっと済ませた

「お金は払うよ」

「いーの！いつも頑張ってる瑠姫にご褒美！なの！」

そう言ってAは頑なにお金を受け取ってくれなかった

嬉しかった

いつも頑張ってるって言ってくれて、少しだけ泣きそうになった

「お待たせしました」

席に着いて数分待つと、店員さんが注文したものを運んできてくれた

「ありがとうございます」

こうやって店員さんにお礼を言えるところも好きだ

「瑠姫におすすめなのはこれ！」

「じゃあ、いただきます」

そう言われてAにおすすめされたケーキを早速一口食べた

「…好きだわ」

「そうでしょ！？これ瑠姫が好きそうだなあって思ってたんだ！」

『Aが、好きだよ』

そう言えたらどんなに楽なんだろう

ステージに立つことを夢見る俺に、彼女という存在がいることはきっと良いことではない

夢を叶えた時、彼女という存在がバレたらファンはいい思いをしないだろうし、なによりAに迷惑をかけたくない

こんな中途半端な今のまま、想いを伝えることなんてできない

「本当に好きだわ」

「そんなに好き？」

「うん」

Aのことがすごく好き

「そんなに喜んでもらえて私も嬉しい」

そう言って笑うAの笑顔が、やっぱり好きだよ