Astilbe Ⅱ (ページ24)

今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:52,988 hit

川尻蓮ページ24

生まれ変わったら一緒になろう

そんな綺麗事なんて、言いたくない

「…俺、オーディションうけるんよ」

「そっ、か…」

もうオーディションの時期が迫ってきていて、早く言わなきゃと何度も思っていたのに

結局言えたのは始まる直前だった

　

お互い好意があるのは分かっていたけど、あえて告白はしなかった

…いつか来る別れを知っていたから

でもやっぱり好きだから、隣にいてほしくて

今まで散々優しいAに甘えてきた

きっとAは聡い子だからいろんなことを察してくれているんだと思う

それに何度も助けられたし、そういうところも好きだった

好き

愛してる

Aのことがすごく大切

側にいて欲しい

どれも俺の本当の気持ちなのに、今伝えたってAを苦しめることにしかならない

だって成功してもしなくても、Aを待たせることになる

俺のせいでAの人生を歪めてしまう

それが怖かった

好きな人には幸せでいてほしい

俺の隣で笑っててほしい

たったそれだけの願いをどうして叶えることができない

どうして俺は大切なものを大切にできないんだろう

大切にしたいのに、俺のちっぽけな手じゃ零れ落ちてしまう

「今まで本当にありがとう…」

「こちらこそ、だよ。蓮と出逢えてよかった」

ああ、そんな顔でそんな言葉を言わせたいわけじゃないのに

生まれ変わったら一緒になろう

そんなセリフ、気休めにもならない

一緒にいたいのは今なのに？

生まれ変わったら、なんて言いたくないよ

好きだよ
ずっと側にいたかった
かけがえのない存在なんだよ
愛してる

そう言いたい気持ちをぐっと抑えて

「ごめん…」

そう言って、Aをぎゅっと抱き締めた