Astilbe Ⅱ (ページ18)

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『1位は…豆原一成！』

テレビの中で名前を呼ばれた一成は、涙を流していた

本当に一成は夢を叶えた

すごく誇らしいと思う反面、とてつもない寂しさに襲われた

その日から一成はテレビやら雑誌やらに引っ張りだこで、会える日なんてなかった

会って直接おめでとうと伝えたかったのに

でもきっと笑って言えないだろうから良かったのかもしれないと思いつつ、おめでとうとだけメールを送った

「俺、高校辞める」

「え、？」

デビューが決まって久しぶりに会えた時、一成はそう言った

「辞めると言うか転校、かな？デビュー決まって、ありがたいことにお仕事がたくさんあって…もうこの高校には通えないから」

「そう、なんだ…」

分かっていたことなのに

本人の口から直接聞くと一気に現実味を帯びて、虚無感に襲われた

「もしかしたら帰ってくることもなかなかできないかもしれない」

「…帰って来れなくたっていいよ！だってそれだけ売れっ子になってるってことでしょ？」

私は努めて明るくそう言った

「…そうかもね」

一成は苦笑いしていた

アイドルになんてならないで

私のそばにいて

なんて私のぐちゃぐちゃで醜い気持ちをぶつけたらダメだと思って必死に蓋をした

「俺、頑張ってくる」

「うん、応援してる。私が1番のファンだからね」

「ありがと、A…バイバイ」

一成はそう言って、東京へと向かった

アイドルとしての専門的なレッスンなど受けたことのないはずの一成は、きっとこれから死ぬほど努力をするのだろう

そしてきっと素晴らしい歌やダンスを見せてくれるのだろう

ファンにたくさんの夢や希望を与えるのだろう

でも私の知っている一成はどこに行っちゃうの

私から好きな人を、一成を奪わないでよ

私はまた、アイドルが嫌いになった