Astilbe Ⅱ (ページ15)

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「え！河野先輩と話したの？！」

次の日、数少ない友達に昨日あった出来事を話すと、とても驚かれた

「有名な人なの？」

「有名だよ！白岩先輩と並ぶくらい！」

「そう、なんだ」

噂とかそういうのに疎い私でも、白岩先輩のことは知っている

その白岩先輩と並ぶくらいすごい人だったんだ…

「じゃあ今日の放課後、サッカー部見に行ってみる？」

「サッカー部？なんで？」

「なんでって…白岩先輩も河野先輩もサッカー部だからだよ！」

「サッカー部だったんだ…」

先輩を一目見たくて、私は放課後に友達と共にサッカー部の練習を見に行くことにした

「ねえ、いつもこんなに人いるの？」

サッカー部が練習しているグラウンドにはたくさんの生徒が集まっていた

ほとんどが女の子だったけど

「いや、いつもはもうちょっと少ないはず…なんでなんだろう」

友達と話していると、周りから歓声が上がった

どうやら純喜先輩がシュートを決めたっぽかった

「…すごいね」

そんなに長い時間いたわけでもないのに、なんだか疲れてしまった

人と人の合間から見えた先輩は、たくさんの人に囲まれていて、とても嬉しそうに笑っていた

…ああ、私とは違う人間だ

こんな地味で目立たなくて、友達も少ないような人間とは違うや

そんな時、純喜先輩がこっちの方を向いて大きく手を振った

私の周りにいる女の子たちが黄色い声をあげた

こんなに人がいるんだから、絶対私に手を振ってくれたわけじゃない

誰か他の人に手を振ったか、みんなに向けて手を振ったんだ

そう自分に言い聞かせた

「A？もういいの？」

友人は不思議そうにそう言った

「うん、もういい」

諦めなきゃ

これ以上見ていたくない、これ以上関わりをもってはダメだ

まだ、取り返しがつくはずだから