Astilbe Ⅱ (ページ12)

今日:14 hit、昨日:18 hit、合計:53,019 hit

#2 ページ12

「ごめんね、残業させちゃって…」

「全然大丈夫です！」

本当なら今日は残業の予定ではなかったのに、先方からの急な変更に対応していたら、定時をとっくに過ぎてしまった

本当は1人で残業するつもりだったけど、手伝うと言ってくれたその優しさを無下には出来なかった

2人で集中して取り組んで、日付が変わる前にはなんとか終わらせることができた

「本当にありがとう！助かったよ！」

「A先輩のお役に立てたなら良かったです！」

佐藤くんにお礼を言いながら手早く片付けをして、2人で会社を出た

最近ぐんと寒くなったと思うけど、夜は更に冷える

冬が近づいてきていることを実感して、また心が締め付けられた

「…A先輩」

「どうしたの？」

会社を出て少し歩いたところで、佐藤くんが立ち止まった

「どうしたら、振り向いてくれますか」

佐藤くんは何時に無く真剣な声で、真剣な顔でそう言った

その真っ直ぐな視線に耐えられなくて、思わず目を背けたくなった