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9. 盛大な好きバレ ページ9






「サム!!!お前ちょおこっちこいや!!!」



試合が始まり、1セット目が終わった。

コートチェンジの合間、放心状態で突っ立っているとつかつかと近寄ってきたツムが俺の胸ぐらを掴む。



「なんやあの腑抜けたプレーは!!!試合始まる前のやる気はどこいってん!!!」

「侑、終わってからにしい」

「お前今日おかしいで!!ただの練習試合やからって気抜くんなら帰れや!!!!」



恐ろしい剣幕で怒鳴ってくるツムを見て、なんやなんやとざわつき始めるギャラリーたち。

そしてがくがく揺さぶられる俺はされるがまま、何も抵抗できずにおった。



「なんやねん、なんで何も言わんねん…っ」


「……侑、ちょっと1回離してあげて」

「角名!!こいつの味方するんか!?」

「いいから」



見かねた角名が侑の腕を掴んで制止する。

「治、全部言っていい?」との俺への問いに、俺は頷くことも首を振ることもせんかった。



「…はあ。じゃあもう言うから」

「なんや、なんか文句あんねやったら言うてみいや」

「……文句とかじゃ、ないけど」



部員たちの視線を集める角名は、スパッと言い切るように俺に現実を突きつける。



「治の好きな子が侑のうちわ持ってた」

「…………はぁ、?」



ぽかんと口を開けて固まるツム。

それを聞いとったその他の部員も同じ顔をした。



「ど、どういうことなんそれは」

「ほら見て、あのギャラリーの最前列にいる子」

「どれ?」

「あっちょ、そんな全員で一斉に見たらバレますって」

「いやお前が見ろ言うたんやん」



わたわたする角名に冷静にツッコむアランくん。

できるだけバレへんようにチラ見して、「あーあの子か」「あの子な」「白カーデの」「かわええな」「俺タイプやわ」との声が部員から聞こえる。てかおい誰や最後の言うたん。



「あの子試合ん時よーおるで?いっつも1番前で侑くん〜言うてうちわ振りよるから覚えてもうたわ」



悪気のなさそうなツムの言葉がグサッと深く刺さる。

なんやねん、認知済みかい。


10. 攻撃力は上がる→←8. " 絶望 "



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作者名:みずかわ | 作成日時:2021年1月10日 14時

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