7. あの子の虜 ページ7
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そしてきたる土曜日。
「っしゃあ！！試合や！！やったるでコラ！！！」
「え、サムが珍しく気合い入っとる…どうしてん、死ぬほど気持ち悪いで」
「ツム！！今日もええトス頼むな！！」
「いや待ってほんまにキモいわ」
ユニフォームに着替えてブンブン腕を回す俺を見てガチな顔で身震いする片割れ。
いつもやったら殴るか蹴るかするとこやけど、今日の俺はそんなことせえへんねん。
なんたって、西川さんが観にくんねやから！！！
「マジで今日の治ずっとおもしろいわ」
「おもろいか？なんか心配やわ…」
けらけらと笑いながら俺をスマホで撮る角名と、本気で心配そうな顔をして見てくる銀。いや試合始まるっちゅーのになんでスマホ持ってんねん。
ざわざわと賑やかになり始めた体育館に、胸がさらに高鳴る。もうそろそろ西川さん来とるやろか。いやあかん、キョロキョロ探したら目あってまうかもしれへん。
それでもついつい上を見上げてしまう目線は、ピタッと一つの姿を捉えた。
( おったあああああああ )
あれは間違いなく西川さん！！
待って、私服マジでかわええんやけど。白のカーディガンてなに？どこのやつ？え、俺も買おかな？
なんてアホなことを考えつつ、彼女を見つめる。
「！」
あかん！目あった！！！
慌ててそらすも、その次の瞬間にはまた西川さんのほうを見る。
すると彼女はまだこっちを見とって、俺と再び目があったと確認するとあの天使のような笑顔で手を振ってきた。
「っは、待っ、す、すな、見て」
「ん？…あ、来てるじゃん。手振り返さないの？」
「振り返してええんかな！？」
「いやいいだろ、お前に振ってんだよ」
興奮気味に角名の肩をバシバシ叩いて伝える。
オドオドする情けない俺に角名は呆れたらしく、俺の腕を掴んで大きくブンブンと振らせた。
西川さんは満足したように頷いて、俺から目を離す。
「…っあかん、お手振りしてもた…」
「お手振りて」
顔の熱が治らへん。
あかん。俺はもう、あの子の虜や。
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作者名：みずかわ | 作成日時：2021年1月10日 14時
