17. 台風の目 ページ17
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「サム〜お兄ちゃんに辞書かーしてー!!」
そんな声により、一瞬で現実に引き戻された。
「ハッ、侑くん……!!?」
「おわっ!?サムお前なにをこんなとこで女子とイチャイチャしてんねん!!」
西川さんと手を繋いでラブラブしとる(ただの握手)俺を見て、ギョッとする憎い片割れ。
ツムの存在を認識した西川さんは一気に顔を赤くさせ、俺との大事な繋がり(ただの握手)をいとも簡単にパッと離した。
「ってあら?あんたあれやん。なんとかちゃん」
「あっ、Aです!」
「そーそーAちゃんAちゃん」
ほれみい、覚えたでとかカッコつけて言うてたくせに数日経てばこのざまや。ほんまこんな適当男のどこがええねん。
西川さんも西川さんで、名前忘れられてんのになんでそんな目をハートマークにできるん?
「そんな手繋ぐほど仲良うなったん?まあどーでもええけど、とりあえず辞書貸してやサム」
「………絶対嫌や。はよどっか行け」
「え〜でもAちゃんが俺にどっか行ってほしくなさそうな顔してんで?」
「えっ、そんな!そんな、そんな…っ」
憎悪ではち切れそうな俺の心を嘲笑うように、うっとりしとる西川さんを指差して微笑むツム。
西川さんは顔をさらに赤くして恥ずかしがり、否定するように小さく顔の前で手を振っている。
ほんまになんでここまで対応違うん?俺なんかした?
いや、なんもしてへんからこそか。
「あ、ほんならAちゃんに借りよかな〜?」
「しゃあないから俺が貸したるわボケ」
「ありがとさーん!」
「治ちょろすぎ」
「うっさいねん」
光の速度で辞書をツムに渡す俺を見て角名が笑う。
そらそやろ。あいつは教材パクリ常習犯や。
西川さんに迷惑なんかかけられへんわ。
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作者名:みずかわ | 作成日時:2021年1月10日 14時