自分タレントじゃありませんので (ページ1)

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なぜ生きているのか。ページ1

X年前…
　
　
　

キキーッ！！ガンッ！！！
　
　
　
『…ママぁ！！』
　
　

あの時の記憶だけは鮮明に覚えている。幼稚園の帰り道。迎えに来てくれた母とふたりで買い物袋を一緒にもって歩いていた。
あの日はとっても夕焼けがきれいで、横にいた母が夕焼けにあたっていた姿はもっときれいだった。
　
　

母は私を女手一つで育ててくれた。母の妊娠中、父は突然姿を消した。そこから母は一人私のために頑張ってくれた。母には頼る人は誰一人としていなかったそうだ。
　
いつも笑顔でいた母は私にこう言っていた。
　
「いい？A。人はね、夢をもって常に笑顔でいればどんなことだってうまくいくの。勇気と優しさを持ち続けて？そうすれば必ず幸せになれるのよ。」
　
　
この言葉を私に微笑みながら話してくれる母が大好きだった。母といれば毎日が幸せだ。毎日母と一緒にいたい。幼い自分はそんなことを思っていた。
　
　
　

　
でもあの日、母はバイクにひかれた。しかも近くの銀行強盗の犯人の逃走バイクだった。
　
何が起きたのか最初はわからなかった。でも、目の前には倒れている母。幼稚園生の自分はただ叫ぶことしかできなくて、町の人たちが駆け寄ってきて救急車を呼んだりとか色々していた。
　
　
どうやって病院に来たのかはわかんなかった。でも目の前にいるのは、まるで絵のように目をつぶっている母の姿。自分の隣に座っているのは近所のおばさん。いつも自分たちのことを気にかけてくれた。
　
　
ただ一言も発さずにその場にいることしかできなかった。元々泣くとか起こるとかの負の感情を表に出すことが苦手な自分は大泣きすることもなく、ただそこに居座るだけだった。
　
　
　

？？「凛香！！？」
母の名前を叫びながら勢いよく病室のドアを開けたその男が自分の父親だと分かったのはもう少し後のことだった…
そして、この時に一緒に来たお爺さんが自分の人生を変える人だとは、この時の自分は思いもしなかった…