笑わない女【名探偵コナン】【警察学校組】【警察学校編】Part2 (ページ1)

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それから降谷は調理器具の名前から、使い方を簡単に教え、アリシアは真面目にメモを取る。

包丁の持ち方を指導すると次に基本的な野菜の切り方を教え始める。

「包丁で野菜を切るときは、刃はまっすぐ下ろし、野菜に添える左手は猫の手だ。」

「猫？」

アリシアは自分の思う猫の手を左手で表現しながら小首を傾げていた。しかしそれは可愛げと萌え要素のあるものではなく、引っ掻くような攻撃的なポーズであった。
降谷は真面目に真似をするアリシアをクスリと笑い、実際に野菜を切るのを見せた。

トントントンとリズミカルな音が響くと均一の厚さに切られたきゅうりの輪切りにアリシアは純粋に感動していた。

「はい、やってみて？」

「う・・・うん。」

降谷の格好を見よう見まねでやってみるものの、肩に力が入りすぎてしまい、どこか動作がぎこちなく、トン・・・トン・・とキュウリの輪切りを一枚切るだけでも物凄い時間がかかっていた。

降谷はなんでも完璧にこなすアリシアが、こんなにも不器用な一面があるとは思わず、そのギャップに驚きと新鮮さを感じていた。

流石に手本を見せるだけでは上手くいかず、思うようにコツを伝えられない降谷は痺れをきらす。

「いいか、アリシア。こうやるんだ・・・。」

「零・・！？」

降谷はアリシアの背後に立ち、後から抱きしめるような形で彼女の手を取って直接的に感覚を教えた。

「もっと肩の力を抜いて、左手の手首はまな板に固定して、爪を立てるように意識しながら野菜をもつ。包丁は・・・。」

その様子は子供が初めて料理に挑戦するのをサポートする親の様にも見えれば、親密な男女の関係のようにも見えた。

降谷はアリシアの手を取り説明しながら思う。

普段は逮捕術や柔道等でペア組む事が多いが彼女の手の小ささや、腕の細さ、身体がこんなにも華奢だという事を降谷が意識したのは初めだった。

いつも自分を投げ飛ばす化け物のような怪力を持つ同期も、こうして見ればただ1人の女性なのだと・・・

「・・・さっきよりコツがつかめた気がする。」

アリシアが少し嬉しそうに声を弾ませ、背後に立つ降谷を見上げる。
フワリとアリシアのシャンプーの香りが降谷の鼻を掠め、想像以上に至近距離にある彼女の顔に降谷は思わずドキリッとした。

「あっ、あぁ・・・それは良かった！」

降谷は高鳴る心臓を悟られない様に、彼女に添えた手を外しそっと体を離した。