鬼に生きる〔鬼滅の刃〕

三十六話 ページ37

貴「っ……ふ…」



必死に迫る雪玉を避ける。

竈門がAの様子に気づき、助けようとするが、あちらも雪玉を避けるだけで手一杯のようだ。

だがそれすらもAは避けることだけに必死で見ることすらままならない。


昔からAは、運動能力に恵まれていた。
それに加えて山育ちだったという事もあり、Aの元々の身体能力だけならば誰にも負けはしないだろう。

だが、それは普通という範囲の中でだけだ。


毎日命がけで戦い、鍛え続ける人達にとってみればそれはまだ未完成である。



貴「っ！」



その時、Aの足がもつれ、雪の上に倒れこんだ。
そこを狙ったように投げ込まれた雪玉がAに迫ってくる。



貴「(やばい……このままじゃ、当たる。)」



前の玉を避けた時のままなので、今は空中にいる状態。

空中で咄嗟に避けるなど当然無理だ。



貴「(……どうせ当たっても鬼だしすぐ治る…よね。)」



鬼なのだから傷などすぐに………



貴「(鬼？……！)」



そう鬼だ。

人をくらい、身体能力が高く傷の修復も容易い。
そして、人に不可能な事も可能にできる。



みんな「！？」



皆が驚いた。

当たるだろうと誰もが思っていたからだ。

そんなAの体は雪玉が当たる直前に、急激に小さくなり、うまく空中で体をひねって真っ白な地面に着地した。



貴「(小さく…小さく……)」



どうやらAが小さくなると言う事を強く願えばなるようだ。

だが、その額には変わらず小さなツノが生えている。

前とは少し違った。



竈門「！禰豆子と同じような事ができるのか！？」



宇随「あれば前の……いや、少し違うか？」



貴「……ふく。」



みんなが動揺している。

チャンスだ。



蜜璃「！きゃっ……当たっちゃったわ…」



ふわりと円を描くように雪玉を蜜璃に投げてやれば、蜜璃は驚いてこけた所で蜜璃の服に雪玉が乗っかった。

アウトだ。



宇随「おー、派手にやるじゃねぇか！！」



貴「ふくっ。」



静かにガッツポーズをしながら次の敵を見据え、投げる。

相手は煉獄だ。



煉獄「むっ！もう油断はしない！！」



簡単に避けられてしまったが、状況は逆転した。
相手の戦力は煉獄だけ……これならば勝てる。

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