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そして次の日。
登校時に会った友達全員が私の髪型を見て驚いていた。けれどほとんどの人が『似合ってるよ』と褒めてくれたので朝から気分は上々だ。
そんな皆の反応も勿論嬉しいが1番楽しみなのは志麻の反応。
志麻はいつも学校に来るのが遅いからきっと教室に入った途端私の姿を見て驚くんだろうな。
_____けれど、現実はそう甘くはなかった。
「……え、」
教室のドアを開けて目に入ったのは、窓際の席に座るあいつの姿だった。
そして、あいつが笑いかけているのは小林さん。
なんで2組の小林さんが私のクラスにいるんだろう。
なんで2人で笑いながら話をしているんだろう。
…………なんで、その2人の手が机の上で重なり合っているんだろう。
思わず教室に入ろうとしていた足をUターンさせてその場から逃げ出した。
意味が、わからない。
志麻は先週小林さんから告白されてそして振ったはず、なのに。
まるで、あの2人が付き合っているかのような。
「……うそだ、」
嫌でもさっきの光景が頭から離れなくてその度に鼓動が早くなる。そして嫌な想像が勝手に頭の中で繰り広げられていく。
お似合い、だった。
2人とも顔が整っているから美男美女で、周りが入れない雰囲気を醸し出していて。
そして、ウキウキして言葉一つに浮かれて髪を切っていた自分が惨めで仕様が無かった。
その後、どうやって教室に戻ったのか覚えていない。
気づいたら放課後になっていて、いつものように志麻が「おーい、帰ろうぜ」と私に声をかけてきていた。
その声があまりにも普段と変わらなさすぎてもしかして本当は付き合っていなくて、私の思い違いだったのかもだなんて考えが浮かぶほどだった。
「う、うん」
「遅えわ」と笑う志麻の横に並んで歩くけれど心は落ち着かない。
聞こうか、聞かない方がいいか。
自分の中で答えが見いだせずにいた時志麻が「A、」と言う。
耳を塞ぎたかった。
その場から逃げ出したかった。
けれど、そんな事告白も出来ない小心者の私に出来るはずがない。
「俺、ユウカと付き合った」
「………そう、なんだ」
「1回振ったやん?でもその日のうちに『友達として仲良くして欲しい』って言われて。ええよって言ったんやけど、改めて話してみたら結構楽しくて」
「………」
「ユウカ、あの見た目から想像できへんと思うけどゲーマーでそこも話しが合ってさ」
ユウカ、というのは小林さんの名前で。
照れながら、でも嬉しそうに喋る志麻の声を心の底から聞きたくないと思った。
「日曜日2人で出かけた時、俺から告白した」
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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