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「ねーえ、ユキ。私ってショート似合うかなあ」
「なに?髪の話?」
「そー」
授業の間の休み時間。
友達のユキの前の席の椅子に座りながらそんなことを聞いてみる。脳裏には昨日の志麻の言葉。
ユキは「うーん」と私の顔をじっくりと見る。
「いけそうではあるけど絶対見慣れない」
「いける?いけそう?」
「まあたまにはいいんじゃない?どうしたの突然」
「んーん、なんでもなーい」
「あっそ」という冷たい言葉と聞こえてきたのは授業の始まりを知らせるチャイムの音。
やべ、と急いで自分の席に戻る。
自分の席に座った途端ガラガラと立て付けの悪いドアを開けて先生が入ってきてホッと息を吐く。
先生の言う教科書のページをペラペラと開きながら、私はいつ美容室に行こうなんて浮かれた事を考える。
私の心はもう決まっていた。
( 突然私がショートカットにしたら、あいつどんな反応するかな )
似合うって言ってくれるだろうか。
そして終いには惚れてくれたり、しないだろうか。
ううん、惚れてくれだなんて高望みはしない。しないから、私を見て少しでも可愛いだなんて思ってくれないかな。
思わず口元が緩んだ。
「おい、何笑ってんだ。この問題解け」
「……………やべ」
***
「お客様お似合いですよ〜〜!」
そして3日後の日曜日。
私は美容室で美容師さんにニコニコとした笑みを向けられていた。
「おぉ………」
「とっても可愛らしいです!髪が長かった時もお似合いでしたがこちらもまた雰囲気がガラッと変わっていい感じですよ!」
「ありがとう、ございます……」
お世辞だろうな、と思いながらも美容師さんの言葉に素直に嬉しくなった。
目の前の鏡に映るのはショートカットの自分。見慣れない姿に鏡を凝視してしまう。
似合って……いるのかな。
でも思っていたよりもマシな気がした。
軽くなった頭と共に心まで軽くなって気がする。お会計を済ませ、カランという軽やかなベルの音に見送られ外に出た。
首周りに髪がないので吹いた風がダイレクトに肌にあたり少し寒い。
けれどそんな事もどうでも良くなるほど私は明日が楽しみになっていた。
( 早く、あいつの反応が見たい )
驚かれた時なんて答えよう。なんで切ったの?と言われたらいっその事『志麻が言ってたから』だなんて答えてしまおうか。
「ふふ、楽しみ」
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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