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「やっぱ最近、お前って9番に甘いんじゃねぇの?」
「うっさい黙れ」
同じ看守のうらたんにそう告げられて大変不機嫌であった。
何を今更。とも思ったがそう見えてしまうのは仕方がないことなのだろう。
それを見ていた坂田も「そうやそうや〜!」と茶化してくるのだからイライラが募って仕方がない。
唯一志麻くんだけが何もないかのようにスマホを弄っているのだが。
「看守が囚人に甘いってどうかと思うけど?」
「それはうらたん達にそう見えとるだけやろ。そんなん知らんから」
「いや、他人から見て甘そうに見えたらお前が咎められるんやぞ。いくらお前が女やからって許されへんからな」
少し厳しい口調になった志麻くんに黙る事しかできなかった。
確かに自分でも最近甘すぎるということを自覚しているし、彼女に少なからず好意を抱いていることも自覚していた。
それを悟られぬように隠すようにしていたのを仲の良い三人には見破られてしまった。
…だからと言って彼女に対する態度を変える訳でもないが。
チラ、と囚人達が外に出て話すのを見る。
四人で管理しているエリアは女性が多く、ハッキリ言って普通の人間が普通以下に見えるほどにここの囚人は魅力的な女性が多かった。
過去にストレスによって囚人が死んでしまったことがあったので、今は定期的な身体検査を兼ねた刑務所内にある庭での自由時間となっている。
いくら魅力的な女性が多いと言えど、一際目を引くのは彼女、9番の囚人であった。
「まぁた9番見とる。ホンマ大好きやな〜!」
「まぁ甘くなる気持ちも分からんでもないけどな。9番可愛すぎるし。…でも程々にせぇや」
坂田がそう言いながら肩を組んで来たのと同時に志麻くんも声を掛けてくる。
基本的にここの四人は今の会話だけ切り取れば甘すぎる看守のようにも聞こえるが、実際は他のどのエリアの看守達よりも鬼だと恐れられている。
「身体検査〜9番の済ませて来いや〜!」
ドンッと坂田がいきなり背中を押して来て前に崩れ落ちそうになる。
チッ、と舌打ちしつつも内心は嬉しかった。
あまり人目に付かない所に移動している9番を追って着いて行く。
いつものように彼女の身体に手を這わせていると、後ろから少し見えた彼女の瞳が憂いを帯びているのが分かった。
その瞳をこちらに向けたかと思えば、振り返り、瞬間────
───唇が触れ合った。
「は、」
自分の口から出たのは慌てたような言葉。
だって、
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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