センラ＊どうやら僕はfoolみたいだ(鎖座波) ページ15
｢9番！今すぐ出ろ｣
いつもの聞き覚えのある声にあーはいはい、と溜め息混じりに返答する。
縦に模様が入っていた視界が、その鉄格子を開けられたことによってクリアなものへと変わる。
私から見て右側の髪だけが長くなっているアシンメトリーな金髪の髪型に、出る所は出ていて、引っ込む所は引っ込んでいる美しい体系の女性。
毎日毎日飽きもせずに私のことを見張りに来るのがこの看守であった。
｢今日は何？別に話したいことなんてないんだけど｣
｢……｣
沈黙。
手首にはめられた冷たい鉄と、片方の足首に付けられた鉛のように重たいものを引きずって彼女を挑発するように笑う。
｢今日もキレイだね看守サン｣
｢うるさい。囚人と慣れ合ってる暇なんてあらへんわ｣
たまに出る方言。
生まれた時からあまり自由が無かった私にはどこの地方かなんてわからないけど。
すると、するりと私の身体に手を回してペタペタとあちこちを触り始める。
｢えぇ〜！触り方厭らしい〜！｣
｢うっさい！！定期的にしてることを一々口出しするな！｣
お〜怖、とさらに揚げ足を取って定期的に行われる検査を受ける。
囚人服に何かしらの道具を隠し持っていないか、という検査らしい。過去に囚人が脱獄を試みた際に囚人服に道具を隠し持っていた事例があったことからそうするようになったそうだ。
｢ねぇねぇ看守サン｣
｢…｣
｢人間と同じ扱いしてくれてありがとね〜。私は嬉しいよ〜。それとさ、私の好きな人になんか似てて嬉しいんだよね｣
ピクリ、と肩が揺れたのが分かった。
厳しそうで、取っ付き憎そうな彼女の外見ではあるが、話してみると案外分かりやすい人間だと思う。
｢お、私の好きな人ともしかして知り合い？｣
｢…お前が殺した人間のことやろ｣
｢え？心外だなぁ。センラっていう人で私が殺したのとは違うよ。知ってたりする？｣
｢うるさい｣
それだけ言って私の長い長いピンクの髪を梳かしてくれる。
身なりはきちんとしろ、と私の髪の毛を梳いてくれるのだ。その心地よさが私は好きでいつもいつもウトウトとしてしまう。
全くもう、彼女は可愛らしい。
彼女が女性であることなんて分かっているけれど、明らかに私に少なからず好意を抱いているのは分かる。
恋愛とかそんなものじゃなくて、普通に私のことが好きなんだな、なんて。
だからいつもからかってしまうのだ。
｢……
｢それはどうも。褒め言葉だから｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (
レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
