＊＊＊ ページ14
「坂田さん」
「なぁに、A？」
「それ、私大好きなんです」
「その名前を呼んでくれる瞬間だけ、私はAでいれるんです」
「じゃあ、また来世で」
2人背を向けて、それでも手はしっかりと繋いで眠り始める。
＊
「あ、最後に一つだけ」
坂田さんの目を閉じる前に言ったことをもう一度思い出す。
「一番最初に会った時、
「ああ、僕この人と恋に落ちるな」
って思ったのはAだけ」
”それ”がずっと続きますようにと。私は
今世
も、水槽を破壊した。
確かに恋だった事を水槽にしまって、私は水槽に入った坂田さんだけを恋して、海に浮かびに行く。前も、今も、後も。靴は誰も拾ってくれないし、私が拾いに行くこともできなくなる。止まった時計と止まったままの心臓を抱えて、私はまた記憶を探しにいこうか。今日が毎日続く未来を笑って抱きしめて。坂田さんを好きになった世界を、さよならしないで。ただ笑うだけで。
私、今日も坂田さんと好き同士で痛かった。ズキリ、ズキリ傷んだ頭を撫でる。これを楽しかった坂田さんとの思い出に乗せて眠る。今度こそ、鮮明に手の感触も、温かさも、全てを覚えて目を閉じる。靴はきっと誰も気づかないで、またどこかの店頭に売られていて、あわよくばセットで靴下も新品で売られている。買った人はまた海にやってくる。その買った人は、私と坂田さんで作られた道を辿って、私は何度も海に沈んだ。元人魚じゃなくて、現人魚なのかもしれない。太腿から下が人間な事を確認して、砂に彼を埋めている。綺麗なままだったので少し諦めたくなった。それでも、私は坂田さんとまた、会う。確信めいたことを言って、来世恋した相手が違かったりしたらどうしちゃうんだろう。
坂田さんの顔までを海の一部にして、私も今から上に行こうか。坂田さんを抱いた私は、彼に眠れない子供に思われているかもしれない。それでもいいや、覚えていてね。
夜が明けるまで私、この人に恋をしていた。
朝が来るまで愛をする
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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (
レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)
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