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そんな出会いも、もう数ヶ月前の話だ。
あの日以来、浦田くん…もとい浦田は毎日私に付きまとうようになった。

一人が当たり前だった毎日は、いつの間にか 浦田と二人の日常に塗りかてられていて、けれど何故かどこかその日々が嬉しいなんて思ったりもしていた。

今日も今日とて、私は浦田と一緒に屋上でぼうっとしている。







「 また上見てる 」


「 え?あー、」


「 俺さ、まだAから質問の答え貰ってないんだけど 」


「 まだ言ってんの? 」






浦田は会うたびにその話を振ってくる。答えることなんて今までする素振りさえ見せないのに飽きないな、なんて思いながら ちらりと浦田に目をやると、「お、初めてこっち見た」なんて。

そう言って笑った浦田の眼は想像以上に優しくて、ただ深い意味も無いけれど、言ってもいいかなって 聞いてもらおうかな、なんて思ってしまって。







「 …お母さん、」


「 え? 」


「 お母さんを、見ようとしてるの 」





浦田は、私の呟きが彼のいつもの言葉への返事だと分かった途端 ぽかんとしていた表情を引き締めて、真剣なものへと変わった。
なんだかそれがおかしくて少し笑ってから、大した事ない話をした。



本当に、大したことない話なのだ。

小さい頃にお父さんとお母さんが離婚して、それから私はお母さんと二人でずっと生きてきて、お母さんのことが大好きで、でも入学式前に事故でお母さんが亡くなってしまって。


言葉にすれば、ただそれだけのこと。
せいぜい数十文字で纏められるだけの出来事に、私は傷つけられて苦しめられていたのだ。




でも、お母さんが言っていた「笑顔のAが好き」って言葉のために、私は泣かないように気付けば上を向くようになっていた。
あわよくば、空の上にいるであろうお母さんが見えたらなって思いながら。








浦田を見て話をしていたはずなのに、私はいつの間にかまた上を向いていて、それでも零れ落ちそうな涙を止めるようにそっと目を閉じる。

その瞬間、優しく腕を引き寄せられて、私は気付けば浦田の胸の中にいた。
驚きで見開いてしまった目からは呆気なく涙が溢れて、慌ててそれを拭おうとするも強く抱きしめられているからそうもいかなくて、離してなんて言葉も息が詰まって言えずに、私はただ黙って浦田に抱き締められていた。

***→←◎うらたぬき*Don't look up!(零生)



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しろもん* - すごく良い作品ばかりで、ひたすら感動していました。私は、最後のお話が好みです。でも、本当にどの作品も素晴らしかったです。 (2020年1月21日 23時) (レス) id: 36bbb34c6c (このIDを非表示/違反報告)
アヤノ(プロフ) - 涙がボロボロで止まらなかったです。描写もどのお話も素晴らしく、Bバージョンもとても楽しみです。 (2020年1月19日 0時) (レス) id: b204067585 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作者一同 x他4人 | 作者ホームページ:***  
作成日時:2019年12月11日 19時

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