第12話 ページ13
萩原side
俺には今、気になってる奴がいる
あ、恋愛話とかじゃないよ？
…相手男だし
そいつの名前は羔野A
すごくきれーな奴で、ある意味周りから浮いていた
皆も気になってたみたいなんだけど
生憎クールな性格らしく、俺たちと関わる機会なんて無い
同じクラスだった一・二年の頃も、結局は1回も話し掛けられないで終わった
顔が良いだけかと思えば、勉強も運動も出来る
つまり才色兼備な完璧主義者
テストじゃ100点以外は見た事ないし
校内マラソンも上級生を簡単に追い抜いて毎年1位だった
もちろんそんな彼に先生たちは湧いた
天才だ、神童だ、なんて言われて持て囃されていたらしい
まぁ、羔野は困ったように愛想笑いするだけだったけど
羔野はいつも静かに本を読んでいた
窓際にある自分の席で独り、
ゆっくりとそのページをめくる姿に思わず息を飲んだのは、1度や2度じゃない
まるで王子様だ、と話していた女子たちに激しく同意した
それくらいきれーだったんだ、羔野は
でもそれが、大きな壁を作っていた
なんて言うんだろうなァ、
羔野は1種の信仰対象だったんだ
学校の皆にとって、崇めるべき人
だから軽い気持ちで話し掛けちゃいけない、みたいな暗黙の了解さえあった
俺たちは遠巻きに見つめるしか出来なくて
でもそれで満足していた
だから……
俺は今、すっごく緊張している
まさか中学校に入ってまた同じクラスになれるとは思わなかった
しかも入学直後の席替えで、隣同士になるとか…
＿＿よし、頑張れ研二！今こそ己のコミュ力を発揮するのだ！
無意識に手に力が入る
小学校の時、話せなかった事をずっと悔やんでたんだ
そこにあるのは純粋な好奇心だけじゃない
友達になって、話して、一緒に遊んで……
当たり前の＿＿年相応の顔をする羔野を見てみたかった
そんなちょっとした俺のワガママと、欲、だったりする
「これからよろしくね、羔野」
在り来りな内容の筈なのに、周りの視線が一点に集中するのを感じた
…
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作者名：＿名前を変える必要がある | 作成日時：2019年6月23日 16時
