完璧じゃない男たち#3

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第2話


本当に毎日飽きもせず感心する。今日はイートインスペースで優雅にコーヒーを飲んでいらっしゃる。その姿だけなら様になっていてかっこいいなって、厨房からガラス越しに見てそう思うのに。目があったと思ったら、手招きをしてくる。それを無視してパンを捏ねる。


コンコンとガラスを叩く音がして顔を上げると黒服さんが立っていた。それも無視してパンを捏ねる。


「Aちゃん…」
「パンを捏ねてます」
「あの黒服さんの威圧感すごいから…」
「ああもう！行きます！」


店長に捏ねていたものを任せて、黒服に近づく。

「なんですか？営業妨害です」
「ギョンス様がお呼びです」
「は…？A様もお仕事中です」
「ギョンス様が」
「…わかりましたよ」

なんなのみんなして。私仕事中だよ？遊んでるようにでも見える？黒服の威圧感がすごいから、ギョンス様がお呼びですから、って。
知るか！


イライラしながら元凶の元へ。目の前に座って、マスクを下ろした。ギョンスさんは、私を見ながらコーヒーを啜る。


「なんですか？」
「美味しい」

　
手には食べかけのクロワッサン。このお店で１番人気のパンだ。しかもそれ今朝私が焼いたやつ。直接誉められると嬉しくなり、少しだけイライラが収まった単純な私。


「Aさんが焼いた？」
「…はい」
「やっぱり。どうりで美味しいわけだ」
「それはとても嬉しいんですけど…ご用件はそれだけですか？」
「Aさん、いくら欲しい？」
「あの！何度も言ってますよね？いい加減分かってください、お金じゃないんです。ていうか、か、彼氏いるし…」


収まったイライラも復活し、早口で捲し立てれば目をぱちくりさせて固まった。


「彼氏…？いないよ」
「え？」
「Aさんは彼氏いないよ。そのくらいちゃんと調べてあるから」


今度は私が目をぱちくりさせて固まった。え、怖い。確かに彼氏がいるなんて悲しいことに嘘だけど、どうやって調べたわけ？お金持ってる人ってやることなすこと普通じゃない。


「だから別に僕がAさんの恋人になってもおかし」
「おかしいですから」


自分の意思を通したがる。独り善がりの一方通行。
金持ちの思考に付き合ってられない。立ち去ろうとすると目の前に黒服が立って行く手を塞がれる。


「ど、どいてください」
「僕はいくらでも出せるよ」


またも眩暈がするような言葉が聞こえて振り返ると、優雅にコーヒーを飲んでいた。



「君を側におくためなら」

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