: ページ7
.
思い出したら泣きそうになってきた。滅多に生徒の前で笑わない先生が、快く写真撮影に応じていた。私だけに笑ってくれるんだって思ってるからめちゃめちゃ妬いたし、思うまま先生に近づける子達が羨ましかったし、なんだかんだ周りの声が気になって近づけなかったことが情けなくて悔しい。
キムジョンインが言ってた。記念なのにって。一緒に写らなきゃ意味ないじゃんって。もったいないって。その通りだなって思った。
だってもう私には体育祭は来ない。
「そんなことで元気なくしてんの？」
「ひどい…そんなことじゃないし……」
「……んー。そうだなぁ…」
先生は困ったように笑い、こめかみを指先で掻いてる。
「写真だけが全てじゃないから」
こういうところで大人を出してくるのもムカつく。そうだね、撮りたかったねって言ってほしいのにさ。机に突っ伏して足をバタバタさせた。
「おいこらー、机が揺れるからやめろ」
「……全部せんせーならよかったのに」
「ん？なに？」
最後の体育祭。ハチマキを巻いてあげるのも、頑張れって応援するのも、お弁当食べるのも、ペアになって手を繋いで踊るのも、一緒に写真撮るのも、かわいいのにって言ってくれるのも全部、相手がチャニョル先生だったらよかった。
「先生が同級生だったらよかった」
顔を横に向けて、横になった視界で厨房をぼーっと見つめた。先生の様子は全く見えないけど頭上でコトンって音がしたから、おそらくビールを飲んだんだと思う。
ぐすんって鼻を啜ると、ながーい溜め息まで聞こえてきた。さすがに呆れてるかな。でも先生だって言ってたじゃん。……よかった、とまでは言ってなかったけど。
ぎゅっと目を瞑って涙を溢して、腕で目元を拭いてから顔をあげる。先生はどこか遠くの方を見つめていたけど、すぐにこっちを見た。驚くくらい無表情。ビールは全部無くなってる。
「……おかわりいる？」
「いらない」
「………帰るの？」
「うん」
「………」
急に私が変なこと言っちゃったからもう付き合いきれないって思っちゃったのかもしれない。打ち上げ終わりで久しぶりに来てくれたのに、笑って話すでもなく、どうしようもないことに嘆いてメソメソされるなんて楽しい気分になれるはずもないか。
いつもだったら引き止めるけど今日は素直にジョッキを片付けた。その間に先生は席を立ち、お札一枚をテーブルに置いてお尻のポケットに財布をしまいながら扉を開けて外に出た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 855人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「EXO」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こむ(プロフ) - 花さん» ありがとうございます！パスワードがかかった作品は公開終了となっており、お教えしておりません。すみません！ (2021年10月5日 20時) (
レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - そらぬこさん» 攻防のときから！長らくお付き合いくださりありがとうございます！このあとの話も更新しましたので、まだお付き合いいただけるようであれば、ぜひ読んでくださると嬉しいです！ありがとうございますー！ (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - omatsuさん» 遅くなってしまい申し訳ありません…。最高のひとことをありがとうございます！ (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - よーこさん» よーこさんありがとうございます！めちゃくちゃ遅くなってしまいすみません。あたたかいコメントに胸が熱くなりました；； (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - ギョンちゃんさん» 大変遅くなってしまいましたが、こちらこそ読んでくださってありがとうございますー！ (2021年10月5日 20時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こむ
| 作成日時：2019年10月16日 19時
