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「俺のことちゃんと覚えてますか?」
前に、留学中に出来た友達に『Aを驚かせるのは楽しいね』って言われたことがある。理由は、欲しい以上のリアクションをするからだと言っていた。もちろん自分ではそんなつもりもなく、ただシンプルに驚いてるだけだったからわかんなかったけど、もしかしたら今もそう思われてるのかもしれない。
「………うん」
「じゃあ誰でしょう」
「……セフン……?」
「うん。当たり」
でも目の前にずっと恋焦がれていた私の元執事がいたら?
ジョンインと顔を合わせ、ふにゃりと笑っているセフンがいたらそりゃあ、まともな声も出ないほど驚きもするでしょう。
「オ・セフンです」
夢なら夢と言ってほしい。
でも夢なら覚めないでほしいとも思う。
ジョンインが『こちらにどうぞ』と、向かいの席の椅子を引いてセフンを座らせた。
「……いかがなさいましたか?お嬢様もご着席ください」
「な……なんで……?ミンソクさんじゃないの…?」
言いたいこと、いっぱいある。でもありすぎてわけわかんなくて、結局口から出てしまったのはそんな疑問。するとジョンインは首をかしげた。
「ミンソク様がいらっしゃると言った覚えはありませんが」
そして呆然と立ち尽くす私に再度着席を促してくる。腰が抜けたように椅子に座ると、セフンの三白眼がじっと私を見つめてきた。
「ミンソクさんがよかった?」
セフンは全然変わっていなかった。むしろ素敵に年を重ねていて、変わらぬ美しさに加えて色気まで携えている。高そうなスーツを着こなし、艶のある黒髪は後ろに流れるようにセットしてある。綺麗な形の眉毛も、よく見れば柔らかい切れ長の目も、高い鼻も小さな口も、やや舌足らずな低い声も堂々とした態度も全部、私の前から居なくなったときと何一つ変わっていない。
それにしてもなんで今、ここにセフンが……
「では僕は退出いたします。何かあればすぐに」
ジョンインは丁寧なお辞儀をして、部屋から出ていってしまった。入れ違いでウェイターがメニューを持ってきてくださり、双方受け取った。
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こむ(プロフ) - 〇〇さん» まさかコメントを頂けるとは思っておらず、大変遅くなってしまいましたがこちらこそ本当にありがとうございます。こうやって感想頂けることで忘れかけていた執筆時の思い出が蘇ってより一層自分にとって大切な作品になりました。本当に嬉しいです!ありがとうございます (3月8日 19時) (レス) id: 65eaa14bbb (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - 作者の方に心の底から感謝を伝えたいです。長編になると話の筋がよれてしまったり途中で終わってしまったりしますが、無駄な話も無くしっかり伏線回収して感情移入しやすい描写を多く入れてくれて、、、プロの小説家さんだ、号泣しました。本当にありがとうございました (10月30日 0時) (レス) @page47 id: dc7d3a4bc1 (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございますー!お返事遅くなってしまい申し訳ありませんTT一気読みお疲れ様でした!そしてめちゃくちゃ嬉しいお言葉を本当にありがとうございます。大変恐縮です;;私もこれを漫画で見たい気持ちでいっぱいです(≧∇≦)いつか縁がありますように…笑 (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - EXO_Unicorn1228さん» はじめまして!コメント頂いていたのにお返事遅くなってしまってすみません;;泣いてもらえるとは…!笑 11章という長さになってしまうほど描写に拘ってきて良かったなぁと思いました;;最後までお読み下さり本当にありがとうございました(*^^*)! (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - 淡藤さん» 淡藤さま!お返事がとんでもなく遅くなってすみません;;何度も読み返してくださり本当にありがとうございます!ツンで甘いせふん、私の中でもかなりお気に入りのキャラですのでそう言っていただけて超嬉しいです(*^^*)またお見せできたらいいなぁ… (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こむ | 作成日時:2019年10月9日 22時