: ページ30
.
「まあ、俺はAちゃんと会えればそれでいい」
横を向けば目が合う。
「やっとここまで来れたって思ったけど、遅かったみたいだね」
遅かった？言葉の意味が掴めずにいると、グラスを持っている手の人差し指で私の手に嵌められた指輪を差す。
「相手、だれ？」
「相手……」
「もしかし、セのつく奴？」
「………」
「えっ？本当に？だったらあいつすごいわ」
「うん、すごいよね」
「………っあー！それ聞いたら悔しくなってきた！」
壁を蹴るようにしてしっかり立ったベッキョンは、ゴロゴロと大きなロックアイスが顔にぶつかってくるのも気にせずレモンサワーを一気に飲んだ。
「お、お酒そんな飲み方して大丈夫…？」
「だいじょーぶ。相当鍛えられたし。Aちゃんこそ大丈夫？」
「私もね、留学先で結構飲み慣れた」
「あっは！なるほどなー。ドイツだっけ？ビール旨そう」
「うん、美味しかった」
「ってそういう話はどうでもよくてさ」
「………」
「いや、これもどうでもいいか」
「そんなこと……」
本人は気付いていないのか、さっきの一気に飲みのせいで鼻先に水滴がついていた。バッグからハンカチを出してベッキョンに差し出すと『なに？』って首をかしげた。
「なんかついてんの？だったら取って」
「鼻の先にね」
「Aちゃんがとってー」
その甘えた喋り方、一気に昔に戻ったみたい。
鼻先にハンカチを当てて水滴を取ってあげる。
「はい、もう大丈夫」
「ありがと」
「うん」
「Aちゃん、俺ね」
「んっ？」
「Aちゃんには本当に感謝してる」
鼻の頭の水滴を取ったくらいで大袈裟なって笑っていたけど、ベッキョンは微笑んではいるものの同じように笑ってはいなかった。
「Aちゃんに会ってなかったら多分俺、今頃田舎で適当に暮らしてたと思う」
なんて、考えられないようなことを言い始めるから『そんなことないよ』って言えば『あるの』ってすぐ否定されて口を閉じた。キラキラして生き生きとしているベッキョンの瞳を見つめながら耳を傾ける。
「俺元々負けず嫌いだから、あの時絶対偉くなって見返してやるってすっげー闘志燃やした。まあ……最初はただ偉くなりたいってだけしか思ってなかったけど、社会に出て色んなことを経験していくうちにだんだん自分のやりたいこともしっかり見えてきて、”偉くなりたい”じゃなくて”これがしたい”って思うようになって、それに向かって頑張ってきた結果がこれ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 767人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「EXO」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こむ(プロフ) - 〇〇さん» まさかコメントを頂けるとは思っておらず、大変遅くなってしまいましたがこちらこそ本当にありがとうございます。こうやって感想頂けることで忘れかけていた執筆時の思い出が蘇ってより一層自分にとって大切な作品になりました。本当に嬉しいです！ありがとうございます (3月8日 19時) (
レス) id: 65eaa14bbb (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - 作者の方に心の底から感謝を伝えたいです。長編になると話の筋がよれてしまったり途中で終わってしまったりしますが、無駄な話も無くしっかり伏線回収して感情移入しやすい描写を多く入れてくれて、、、プロの小説家さんだ、号泣しました。本当にありがとうございました (10月30日 0時) (レス) @page47 id: dc7d3a4bc1 (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございますー！お返事遅くなってしまい申し訳ありませんTT一気読みお疲れ様でした！そしてめちゃくちゃ嬉しいお言葉を本当にありがとうございます。大変恐縮です；；私もこれを漫画で見たい気持ちでいっぱいです(≧∇≦)いつか縁がありますように…笑 (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - EXO_Unicorn1228さん» はじめまして！コメント頂いていたのにお返事遅くなってしまってすみません；；泣いてもらえるとは…！笑 11章という長さになってしまうほど描写に拘ってきて良かったなぁと思いました；；最後までお読み下さり本当にありがとうございました(*^^*)！ (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - 淡藤さん» 淡藤さま！お返事がとんでもなく遅くなってすみません；；何度も読み返してくださり本当にありがとうございます！ツンで甘いせふん、私の中でもかなりお気に入りのキャラですのでそう言っていただけて超嬉しいです(*^^*)またお見せできたらいいなぁ… (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こむ
| 作成日時：2019年10月9日 22時
