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クローゼットに仕舞っていた”思い出”は、くたくたになった姿で再び光を浴びた。でもこれ、と少し躊躇していたら後ろから『それはさすがに相応しくありませんね』とバッサリ。
「コードには合っていますが、かなり……なんと言いますか」
「ちょっと汚れすぎだよね?」
「そうですね」
言いにくそうにしていたわりにはっきり言いのけた、私の新しい執事ルハン。本当に、お父さんやお兄ちゃんは美形しか揃えてこない。セフンともジョンインともジェヒョンともまた違った美形。そして、美形にも種類があることを知った。
「これと同じものって売ってるかな?」
「全く同じものはないかもしれませんが、比較的オーソドックスなものなので見つかるとは思います。買いに出掛けます?」
「出掛ける」
「では」
「あ、これを買った店に行きたい。覚えてるから」
すぐに車に乗り込み運転手に告げると『かしこまりました』と悩むことなくアクセルを踏んだ。運転手さんは私の側に一番長く居てくれてる。私をずっと見守ってきてくれた、お父さんよりお父さんのような存在だ。
連れてきてもらったお店はまだ元気に営業していた。もちろんそこにベッキョンの姿はないけど、いらっしゃいませと声をかけてくれたかわいらしい男の店員さんを見て思い出す。
『そうだ、Aちゃんの靴選んであげる』
久しぶりに胸が痛む。でもそれが気持ちの良い痛みか、辛い痛みかはわからない。だから知らないフリをしてその店員さんに『この靴と同じものまたはそっくりなものをください』と笑顔でお願いした。
「……なんとかありましたね」
「うん。やっぱりちょっとモヤモヤするけど……」
「ですがせっかくのパーティーにあんな小汚……」
「もうほとんど言ってるよそれ」
「失礼致しました」
「本当にね」
「お嬢さまぁ〜…、怒ってます?」
「……怒ってないよ」
「安心いたしました。それでは会場に向かいましょう」
執事のルハンはとても優秀だ。南の島から来てくれて、一生懸命執務をこなしてくれている。だけどとにかく歯に衣着せない発言が目立つ。最初は吃驚したけど最近じゃ慣れたし、言いきる前に気づくようになったから許してあげている。
でも本当は少しだけ怒った。
これを汚したのは他でもない私だけど、ベッキョンが初めて買ってくれたプレゼントだからたくさん履いたんだよ。
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こむ(プロフ) - 〇〇さん» まさかコメントを頂けるとは思っておらず、大変遅くなってしまいましたがこちらこそ本当にありがとうございます。こうやって感想頂けることで忘れかけていた執筆時の思い出が蘇ってより一層自分にとって大切な作品になりました。本当に嬉しいです!ありがとうございます (3月8日 19時) (レス) id: 65eaa14bbb (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - 作者の方に心の底から感謝を伝えたいです。長編になると話の筋がよれてしまったり途中で終わってしまったりしますが、無駄な話も無くしっかり伏線回収して感情移入しやすい描写を多く入れてくれて、、、プロの小説家さんだ、号泣しました。本当にありがとうございました (10月30日 0時) (レス) @page47 id: dc7d3a4bc1 (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございますー!お返事遅くなってしまい申し訳ありませんTT一気読みお疲れ様でした!そしてめちゃくちゃ嬉しいお言葉を本当にありがとうございます。大変恐縮です;;私もこれを漫画で見たい気持ちでいっぱいです(≧∇≦)いつか縁がありますように…笑 (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - EXO_Unicorn1228さん» はじめまして!コメント頂いていたのにお返事遅くなってしまってすみません;;泣いてもらえるとは…!笑 11章という長さになってしまうほど描写に拘ってきて良かったなぁと思いました;;最後までお読み下さり本当にありがとうございました(*^^*)! (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
こむ(プロフ) - 淡藤さん» 淡藤さま!お返事がとんでもなく遅くなってすみません;;何度も読み返してくださり本当にありがとうございます!ツンで甘いせふん、私の中でもかなりお気に入りのキャラですのでそう言っていただけて超嬉しいです(*^^*)またお見せできたらいいなぁ… (2020年3月30日 15時) (レス) id: fd99a38d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こむ | 作成日時:2019年10月9日 22時