世界で一番小さな戦争#11

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この流れ、もう封印した過去だけど数年越しにセフンに怒られるのかなと予想して体を小さくした。




「やっぱり俺がいないとダメですね」




あれ、思ってたのと違う。懐かしい。
聞き飽きた台詞なはずなのに、今聞いたらどうしようもなく胸が高鳴る。そうだよ、セフンがいないとダメなんだよ。でも懐かしさゆえか、あの頃のように歯向かいたくもなる。




「……いや、そんなことない。もう一人でも大丈夫だし、そのときはジョンインがいてくれたから別にセフンがいなくても」
「もし俺がついていたらそもそもそんな場には送り出しませんので、真面目な留学生活を送っていただけたと思いますけど」
「心配しなくても真面目な留学生活を送ったし……」
「変なドイツ人ピアニストに甘い言葉で唆されて危ない橋を渡ろうとするような生活のどこが真面目ですか？」
「え？！なんでそこまで知って……、じゃあ！そんなに言うなら戻ってきたらよかったじゃん！」
「嫌ですよ」
「なんで！」
「戻ったら今頃ここではなくてドアの向こうにいることになりますので」
「………」
「辞めた意味がなくなるでしょ」



やけに真剣に言うセフンに勢いを殺されて、開けた口をきゅっと噛み締める。続けて『地獄に帰りたい奴いる？』って毒づかれても、私は何とも言えない。私はずっと側にいてほしいって願ってたけど、それはセフンにとっては地獄に縛り付ける鎖でしかなかったのかな。



「……だったらセフンは、今日までの間に何にもなかったの？」
「何が？」
「社長になったならわかると思うけど、会社の経営をしてたら色んな人と出会って、色んな接待をして……」
「……」
「そこでたくさん女性と出会うこともあったと思うけど、今日までの間二人で食事にいったりとかその、いい感じになったりとか、なんにもなかったの？」



セフンは私より大人だし社長という立場になったから、大人の女性との出会いもあったはず。それに男性としてあまりにも魅力的だから女の人も黙ってられないと思う。実際セフンが女性を魅了している場面に遭遇したこともある。またああやってくっついてたりしてたら……そんなことを考えたら寝られない日もあった。


セフンは黙り、わずかに視線をさ迷わせる。



「………ほらぁ、やっぱりあるんだ……」
「何も言ってないけど」
「何も言わないのは認めてるってことじゃないの……？」
「もしそうだとしても何も言えないでしょ。ていうか分かってくれると思ってた」

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