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家を出て、船着き場までの道を二人で歩く。
天気が良くてよかった。おろしたての水色の花柄が潮風に揺れる。
本土との間を往来するフェリーは既に港に着いていて、私は定期券、勇太くんは切符を買って乗船口を通る。
船に乗っている30分ほどは、勇太くんとの対面での会話に慣れるのにちょうどいい時間だった。
誕生日の週の土曜に出かけよう。
勇太くんがそう言ってくれて会うことになった。
彼は東京の大学に通っているものの、ご実家は本土の港町からそう遠くないところにあり、夏休みの帰省を今日の日からに合わせて一週間ほどとってくれたらしい。
何がしたいかと事前に聞かれて、行きたいと私がリクエストしたフレンチトーストのお店に向かう。
港から電車で四駅。
三か月前にできたばかりだけれど、既に地元の情報誌やローカル番組でたくさん取り上げられているお洒落なお店。
ずっと行ってみたいと思っていたそこは、入り口のドアから内装までアンティーク調で揃えられていて、メディアで紹介されていた通りの素敵な空間だった。
天井一面を埋め尽くしたドライフラワーが別世界のようでうっとりする。少なくとも、島の中では絶対に出会えない世界だ。
「あは、目が輝いてる」
「ずっと来たかったの！来れて良かったぁ…、勇太くんありがとう」
まだフレンチトーストも食べてないのに、と勇太くんが笑った。
「東京にはいっぱいある？こういうお店」
「んー、あるのかもしれないけど男だけでは行かないからなぁ」
そうか。考えてみれば当たり前だけれど、男の人は別に行きたがらないよね、と思う。
今店内を見渡してもどこもかしこも女子ばかりで、勇太くんの他に男性は恐らく恋人同士と思われる男女が一組いるだけだ。あぁあのカップル、明らかに彼女の趣味に付き合わされた様子の彼氏の口数が少なくなっている。
もしかして勇太くんも内心「こんな食パンに1300円も払うなんて」と思っているのだろうか。そんな心配が湧き上がったところで、すかさず、「あんまり行かないから、俺も今日来れてよかった」と彼が言う。
私に向けてくれる、優しい微笑み。
時々思う。私の心が読めるのだろうか、と。
勇太くんがいつも先回りでしてくれる気遣いには、感謝を通り越していっそ感動すら覚える程だ。
例えそれが彼の心からの本音ではなかったとしても、許嫁という、恋人とは異なる存在がそんな風にあってくれるというのは、あまりにも恵まれたことだとそう思う。
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こむぎ(プロフ) - sarusukiさん» 2はフラグが立ってるので、問題ないようであればご自身で設定をお願いします！ (2018年6月17日 18時) (
レス) id: c18b3d0fe1 (このIDを非表示/違反報告)
sarusuki(プロフ) - パート2の方が見られなくなってしまいました！！見られるようになりませんか？涙 (2018年6月17日 17時) (レス) id: bd649719ef (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - 湊さん» ありがとうございます！この話は書きたい描写が多すぎるので、できるだけくどくならないように気をつけたいと思ってました…！多分まだまだ続くのでこれからもお付き合い頂けると嬉しいです〜！ (2018年5月20日 16時) (レス) id: ae12cda8c1 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - こむぎさんの書くお話大好きです！！諄くない、綺麗な文章を書く方だなぁ、といつも思ってます。これからも更新楽しみにしてます！ (2018年5月17日 13時) (レス) id: 5d99fecd0e (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ(プロフ) - ゆりーるさん» わーいありがとうございます！3人のもともとの強すぎる個性を殺さないようにキャラ作れたらなぁと思ってるのでそう言って頂けてめちゃくちゃ嬉しいです〜！これからもよろしくおねがいします！ (2018年3月3日 15時) (レス) id: 599e963edf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2018年1月3日 11時
