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「ナイショ」
分かった。こいつ、子どもの扱いがよく分からない分Aのことを完璧に女子として扱っていやがる。なんて奴だ。そうしてそれにころっとやられたAは隣の神宮寺を見上げながらぽーっと、呆けたような顔でアイスを食べていた。危ない。
この上なく危機感を感じて、アイスを食べ終えたらすぐに全員帰すことにした。
人の娘を誑かしておいてにこにこ笑ってる神宮寺にも、「ジン罪な男だなぁ」と煽る4人にも腹が立つのだけど、こいつらは俺が腹を立てる様を見てますます面白がっていた。なんて奴らだ。
「じんくんまたきてね」
見送りの間、Aを後ろからがっしりホールドしながら俺はひたすら神宮寺を威嚇していた。「ねぇなんで神宮寺にだけ言うの?」と紫耀が笑う。うるさい。
「ありがとう。またくるね」
「二度とくるな」
「Aちゃん、俺のことはじんくんじゃなくてゆうたくんって呼んでもいいんだよ」
「お前この野郎…!」
どこまでも煽ってくる。Aもいちいち照れるなバカ。「お義父さん落ち着いて」といつまでもげらげら笑う奴らを追い出すようにして、一度玄関のドアを閉めたけれどAはそれを開けて顔を出し、エレベーターに向かう5人にずっと手を振っていた。そこまで見送るとすぐに、片付けをしにキッチンに舞い戻る。上機嫌にスキップなんてしながら。
「…楽しかったですか」
「うん!」と元気いっぱい返された。それはまぁよかったさ。俺は疲れた。
「神宮寺と何話してたんだよ」
Aが洗った皿を俺が受け取って拭く作業の中で聞いてみる。やっぱり頬を赤くするだけで何も答えなかった。重症かもしれない。
…初恋、とかだったら嫌だな、と思う。すげー嫌だ。神宮寺はいいやつだけど、仕事仲間として心から信頼してるけど、そんなん関係なく死ぬほど嫌だ。
あいつの王子様じゃないエピソードならいくらでも話してやろうと思った。アイドルは夢を売る商売だけどこの場合はやむを得ない。
「あ、今のまきもどして」
あの日以来、Aがそう言うのは決まって神宮寺のパートだった。スルーして俺のパートを流す。「もー!!!」と腹を立てるけれど知るもんか。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません!更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです!!たまに出てくるじんくんも好きです(笑)もどかしくて、キュンキュンする!続きが楽しみです! (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です!表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こむぎ | 作成日時:2019年7月16日 18時