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「お休みとれるの？」
さっきまで寝こけていたくせに、ハワイと聞くや否や目を輝かせていた。
「うーん、休みっていうか」
「うん？」
「南の島で暮らしたいなって。Aと一緒に」
タチの悪い季節病のよう。
俺たちが日々もらえる"好き"という感情なんて本当に些細なきっかけですぐに消えてしまうものだ。だから、消えては失った分を取り戻して、また消えて、その繰り返し。
どこまで行っても安定とは無縁の生き方をしている。そういう生き方を選んだのは他の誰でもなく自分なのに、時々、無性にその全てから逃げ出したくなった。
例えば南の島で、誰にも何にも追われない場所で、Aと俺がその日食べる分だけのために働いて暮らしたい。
そんな下らないことを考えている間、Aからは返事の一つもない。
「…え、寝た？マジ？」
「うん」
「寝てないじゃん！」
「寝たよ。もー優太くんも寝なよ」
「なんだよ、お話ししようぜ」
「…私行かない。南の島なんて。優太くん一人で行けば」
なんて冷たい子だ。育て方を間違えただろうか。昔はもっと素直で可愛かったのに。
もういいさ。どうせお前なんてあと何年かすれば男つくって俺のことなんか口うるさいオヤジとしてしか見なくなるんだ。放課後は毎日その彼氏とデートしてイチャイチャして家に帰るのも遅くなって、帰ったかと思えば優太くんの入った後のお風呂は嫌とか言い出すんだろう。
想像していて悲しくなった。涙が出そう。
Aに背を向けるよう体の向きを変えれば、暗闇でぼんやりと、年頃の割には女の子らしさの薄い簡素な部屋の中が見える。数年前に俺が買ったテーマパークのクマだけがその中に溶け込まない存在だった。
「そんなこと言っても優太くん行かないもん。知ってるよ」
「…こないだの日曜買い物行けなくなったことまだ根に持ってんのか？」
「ちがうよ。だって優太くん、優太くんのことを待ってる人たちを置いてどこかに行ったりなんてできないくせに」
分かったようなことを言う。
あまりにも分かったようなことを言うので、少し、驚く。
けれど、その通りだと思う。
いくら衝動的に逃げ出したくなっても、どんなに弱音を吐いても、結局きっと俺はそこから離れることはないし、心の底からそんなことを望んだことなんてただの一度もない。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています！これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (
レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません！更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです！！たまに出てくるじんくんも好きです（笑）もどかしくて、キュンキュンする！続きが楽しみです！ (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です！表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こむぎ
| 作成日時：2019年7月16日 18時
