夢のハワイぐらし 篇 −25歳と14歳− ページ1
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何かミスをしたわけではない。
自信を失くしたわけでもない。
自分がこの先どうなるかの見当もつかないままただただ焦ってばかりいた10代の頃と比べて、この世界での立ち位置、目指すべきところがどこなのか、視点も定まってきた。
仕事は順調に増えている。努力した分だけ、いや、それ以上に評価されている。見ていてくれる人たちがいて、支えてくれる人たちがいて。
きっと自分はかなり恵まれている方だ。
なのに、不安のような、恐怖のような、得体の知れない感情がどこからともなく湧き上がることがあった。
それは大抵前触れもなく、夜と一緒にやってくる。
いや前触れなら、今回についてはあるな。
前触れというか、きっかけというか。
恐らく一つ歳をとるとか、そういうもの。
「南の島に行きたい」
眠りの淵にいたAが、ほぼほぼ閉じかけていた瞼を重そうに開いてゆっくりとこっちを見る。
悪いことをしたかもしれない。半ば独り言だったので、返事も反応も返ってこなくてもそれはそれで別によかった。
「…なにいきなり」
「ハワイとか行きたくね?」
「え、いきたい」
一つのベッドに入って、隣で寝るのなんてどれくらいぶりだろう。少なくともAが中学に上がってからは初めてだ。
部屋のエアコンの調子が悪い、と適当な嘘をついた。Aは、もう10月になるんだからクーラーをつけるのはやめろだなんて口うるさく言いながらも、渋々その水色のカバーの掛けられた布団をめくってベッドに潜り込ませてくれた。
相手が俺だから一欠片も問題ないものの、ほいほいと男を部屋に入れるこの警戒心の薄さはそろそろ何らかの注意が必要なんだろうか、とふと思う。
…そのへんの教育については分かんないなぁ、マジで。今度そういう本でも買ってこよう。
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りんこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いています!これからも楽しみにしています。 (2019年9月30日 0時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 急といえば急だけど、当然といえば当然な感情な感じです。だって、岸君がずっと側で、愛情たっぷりで、まっすぐで…思春期な女子じゃなくても…なりますよね。益々目が離せません!更新楽しみにお待ちしています。 (2019年9月18日 21時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
ゆっちゃん(プロフ) - 優太くん目線で楽しませて頂いています。2人が幸せになれる事を祈っています。更新頑張ってください。 (2019年9月16日 22時) (レス) id: 8464dfffe9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきてぃー(プロフ) - このシリーズ大好きです!!たまに出てくるじんくんも好きです(笑)もどかしくて、キュンキュンする!続きが楽しみです! (2019年8月16日 2時) (レス) id: 3752f8da94 (このIDを非表示/違反報告)
すばる - すごく好きな展開です!表現力がありお話の雰囲気に一気に引き込まれました。この先二人がどうなっていくのかとても楽しみです。 (2019年8月13日 17時) (レス) id: 62d9628bcb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こむぎ | 作成日時:2019年7月16日 18時