いつでもおいで。

朝田くんと特支教室 ページ7

Story4. 朝田side
『朝田くんと特支教室』

やけに机が揺れている気がして、顔を上げた。
特支教室の中は何だか盛り上がってるみたい。
今日は誠也くんも古謝くんも来てて勢揃いやな。
補聴器の片方を付けると成程かなり騒がしくて、何の話かなって思ってたら和也が近付いてきた。

「淳くん！宿題終わった？」
「今終わった、何の話してるん」
「えっと、最初は先生が来たときの話してたんやけど途中から丈くんが大地くん抱き締めてた＿」
「おい大橋お前また調子乗ってんのか」

パッと和也の背後を見たら、丈くんが鬼の形相で立ってたもんやから反射的に補聴器を外した。
振動で和也を襲った衝撃の強さは察したけど。
頭を抑えた和也が痛ーい！って口を動かしてる。
てか今のタイミングで止めたら結果的に丈くんがここで大地くん抱き締めたみたいに聞こえたで。

「淳くん？おーい、」
「大橋、もう止めとけって今江が」
「え？大地くん？」
「じゅんや、考え事してる」
「補聴器外してるからやろ」

確か俺は昔、病気で耳が弱くなったんやっけ…？
そんな感じの事お母さんに聞いたけど正直あんま覚えてないし、気付いたら補聴器付けさせられてこの特支教室に１人っきりで放り込まれてたわ。
ずっと入院生活やったし友達の作り方も分からず泣いてばっかりの俺に、親は同情することも無くむしろ愛こそあれど厳しい言葉を投げ掛けた。

「淳弥は喋り方も分かるし補聴器で音を拾える、出来ることは沢山あるでしょ！頑張りなさい！」

一番覚えてる、俺はやれるんや！と思えた言葉。
嫌いな補聴器を付けて伝わるか不安になりながら必死に口を動かして、教室で声を掛けてみた。
そしたら、朝田くん喋れるんやね！やってさ。
いや喋れるわ！って思ったけど、腑に落ちた。
授業に着いて行けへん時は自分から助けを求めてみたり休み時間には筆談で誰かに他愛もない話をしたら、どんどんコミュニケーションを取れて。
授業参観でその光景を見てボロボロに泣いた親の顔は一生忘れへん。思い切り笑ってやったけど。

「お母さん何泣いてんの？」
「淳弥…良かった…」
「ふふっ、俺もう平気やから」

「…えっ」

目の前には大地くん、補聴器を付けたら丈くんに声が出てたとかニヤついてたとか散々言われた。
ここで自分の声が聞こえへんのが裏目に出た…
今も補聴器は全部の音が大きくなるし嫌やけど、和也とか大地くんと話すときは流石に付けてる。
ここで皆と出逢えたし障害あってこその俺やな。

大橋くんと特支教室→←続き

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す