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その放送を聞いた全員が、息を呑んだ。なぜ、彼女が。しかし、その考えはすぐにかき消される。突然、脳内に"ビ――――ッ"というブザー音が鳴り響いた。思わず耳をふさいでしまうほど、音量が大きく、その音のデカさに頭を痛くする者もいた。必死に頭痛に耐えていると、いつの間にかブザー音は消えていた。まさか、人が死んでいくたびにこの音が鳴るのだろうか？ だとしたら、たまったもんじゃないが――。
しかし、皆思い出す。ブザー音ですっかり忘れてしまっていたのだが、先程の櫛田まなかの放送の件。どうしても受け入れがたかった。ゲームマスターが、行動させるために言ったデマなのでは、とも思ったのだ。だが、その思いは一通のメールにより打ち砕かれる。
皆の小型タブレットから、ピロンという音が鳴った。開いてみると、いちごちゃんという人物からのメッセージだった。コミュニケーション機能を使って一斉メールを送ったようだ。そこには『おれんじっていう子の、状況を見てほしい』とそう書かれていた。記号、顔文字がいっさいないため、冷たい印象に受けた人、緊迫していると感じた人、様々だったが、1人、また1人と状況を確認した。
そこには、見間違いなどない、『死亡』と書かれていた。他の人の状況も確認したが『死亡』と書かれている人物はおれんじという人しかいなかった。おそらく、おれんじという人物が櫛田まなかだったのだろう。そして、ここに書かれている以上、彼女は本当に死んでいる。それが、事実だ。そして、誰かに殺されたわけでもなく、ゲームマスターがゲームを続行するためだけに殺された。
そして、それは、行動を起こさなければ今度は自分が殺されてしまうのかもしれない。そういうことを示していた。だけど、やはり抵抗はあった。ここにくる前に皆で言った「誰も殺さないでゲームマスターを諦めさせよう」。それは、既に不可能なのである。しかし、行動しなければ待っているのは死。けれど、もし誰かを殺してしまったときの周りの視線、なにより今まで仲良くしていた子を殺してしまうという恐怖。ひたすら悩むしかなかった。
現在、日も隠れ暗い廃墟の中に17人がいる。まだ夕方までは時間がある。ゆっくり、慎重に考えよう。小型タブレットをしまい、皆は思った。
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作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/utahakiku08/ 作成日時：2019年7月7日 14時
