【小説】 colosseum -β- 【募/集/企/画】 (ページ15)

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「え……響？」

　微かな声ではあったが、声を出してしまったことに気づき手を当てしゃがみ込む。どうやら、この声には気づかなかったみたいで、2人は会話を続けている。

「何してるって……探してるように装ってただけです」
「へえ、ここは探したの？」

　花残奏はドキリとする。もしここで、白鳥拓磨が「探していない」と言えば見つかるのである。兄に見つかるのも少しばかり恥ずかしいのか、心の中で"嘘をついて"と祈る。その思いが届いたのか、白鳥拓磨は少しの間をあけた後「はい」と言った。その言葉を信じた花残響は、白鳥拓磨を引っ張りながら他のところを探しに行ってしまった。彼らは元々同級生でそこそこ関わったことがあるみたいだったが、ここに来てからは更に話すようになったようだった。1人になった花残奏は安堵したように、息を吐きだした。

「かくれんぼって、こんなに緊張するんだ……」

　やや放心状態になりながら、そう呟いた。

　数時間後、指定していた時間になったため、かくれんぼは終了することになった。最終的にはほとんどの人が見つかっていた。唯一見つからなかったといえば、花残奏だろうか。どうやら、AVルームを調べたことが伝え渡り、最後まで誰も探さなかったみたいだった。結果的に逃げる側が勝ったことになったのだが。

「あと3日で始まる……。それに、登録者も増えていたしね」

　小型タブレットを確認しながら、東雲颯斗はそういう。『ユキト』、『クラウディア』、『黒夜叉』、『アッシュ』といい、着々と登録者が増えているのも事実だった。のんびりしている暇などない。今から脱出の策を考えるべきなのでは、という声もあがった。

「うんうん、殺さないで済むならそれでいいしね！」

　へらりと笑いながら頷く若鷺廻。3日経ったせいと、先程かくれんぼをしていたせいがあるのか、全体の空気は温かいものになっていた。といっても、未だ「仲良しごっこに付き合っている暇はない」といった雰囲気の人もいるのだが。18人は、改めてこの施設のことを調べ始めた。前より、詳しく。