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「え、なんで何も言わないん……?」
「言ったところでみんな信用するとは限らないからじゃないですか?」

 皆、白鳥拓磨の方を見る。仮に『ノリ気じゃない』と言ったところで信じてもらえるかわからない。だから言わなかった、と考えたのだ。それを聞いた東雲颯斗は納得したように頷き、口を開いた。

「僕たちはまだ出会ったばかりだし、信用しきれていないのは事実だよ」

 「だからこそ協力しないといけないんだけど」と付け加える。そんなとき、ぐぅ〜と、腹の虫が鳴る音がした。

「あはは、起きてから何も食べてないからさ」

 後頭部をかきながら、苦笑いをして謝ったのは櫛田まなか。と、ここで皆気づいたのだが、起きてから何も口にしていないのである。「今後どうするか」は食事しながらにしよう、ということになり、調理ができる人に料理を任せて、他の人は食堂に残って駄弁ったり、「できたら呼んで」と言い残し部屋に戻る人もいた。再び全員が顔を合わせたのは約3時間後である。

 施設を調べてきた人からの情報では、書斎は本しかないらしい。自販機は稼働しており使える。そして、その自販機の横にあった部屋はとても寒いようで、中を調べることはできなかったみたいだ。また、管理室は既に鍵がかかって入れないようになっていたとのこと。その向かいの部屋はAVルームで映画が観れるらしく、DVDなどもあったようだ。ジャンルは豊富でたくさんあるので、暇潰しにはなりそうだった、ということが2階の情報だった。

 1階は、食堂の向かいは入浴場だったとのこと。男湯、女湯で分かれており、ドライヤー、ヘアアイロンの備品は完璧らしい。奥の大きな部屋は『コロシアム』と呼ばれているようだが、鍵がかかって入れなかったみたいだ。使うタブレットと、部屋があっていれば鍵もかけれるらしかった。

 皇・セリュール・夜宵が顎に手を添え誰に言うわけでもなく、独り言のようにつぶやいた。

「脱出の策は見つからなかったな」
「あの人の言うことを聞くなんて嫌だよ」

 大きく首を振りながら夜月明莉は叫んだが、現状は変わらなかった。

 食事を終えた人から食器を洗い、自室に戻って行く。食堂に残り、どう脱出するか、話す人もいたが指で数える程度しかいなかった。

 これからどうなるのか、想像がつかない。脱出しようと考えている人がいることへの焦り。何故、自分が巻き込まれたのかと悩む人。様々な感情を抱えながら、皆、思い思いに溜息を零した。

◆ 第一章 【隠レンボ】→←├



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作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/utahakiku08/  作成日時:2019年7月7日 14時

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