【実.況.者】Link of Seasons Ⅱ【マリカ実.況.者】 (ページ6)

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day50:螢羅ページ6

『…。』
ズ「…。」
き、気まずい…。
かれこれ十分はこの状態だ。
さっきまでは普通に話してた(つもり)なのになぁ。
せっかくの遠回りなのに、どこか勿体無いと言うか。
取り敢えず、この沈黙をどうにかしたい。
何か話さないと。
あ…、
ズ「『あの…。』」
被った…。
ズ「何？先に話せば？」
『い、いや！ズズから話しなよ！』
そんなやり取りをしている間でも、少しだけホッとした。
いつものズズだって、思えたから。
私から考えても変な話だけどね。

間を置いて、彼がこう言ってきた。
ズ「なあ、Aってさ…。」
いや、言おうとして止まった。
言い掛けた言葉は、違う言葉に書き変わる。
ズ「あ、危ねえっ！」
咄嗟に私の右の手首を掴んだかと思うと、自分の元に引っ張る弾みで
彼の近くのコンクリートの壁に押し付けられる。
空いた彼の手は私の左肩に触れている。
身体が密着していて、顔も近い。
息を止めているのか呼吸音がしない代わりに、
その心臓はどくどくと音が鳴っていた、様な気がした。
その背後を、一台のトラックが通り過ぎた。
本当にすれすれで、一歩間違えれば大惨事だったかも。
見えなくなった頃合いを見て、彼が身体を離した。
ズ「この道本当に狭いよなー。
トラックもトラックで他に広い道あるんだからそっち行けば良いよな。」
『…。』
ズ「ん、A？」
『あ、えっと…。ありがと。』
ズ「…Aの骨拾うとか勘弁だからな！
ああやったら拾わなくて済むだろ？」
『ひっどおおお！
決めた！今後さっきと同じ様な事が起こっても
助けてなんかあげないからね！』
ズ「それこそ酷いな！助けてあげたんだから助けろよ！」
『やーだよっ！こいろちゃんなら助けるけど！』
ズ「何であいつの名前が出てくるんだよ！」
『…ふふっ！』
ズ「あははっ！」
ズズとこんな風に話すの、何か新鮮。
それに、すっごい楽しい！
だからか、暫く笑いが止まらなかった。
彼も私につられて笑っている。
何かちょっとだけ、こいろちゃんが羨ましくなった。
あ、でもボロクソに言われるのは嫌かも。

家路に着いて中に入り、そのまま部屋に一直線。
着替えようと制服を脱ごうとした所で、触れられていた肩に手をやる。
途端に先程の事を思い出し、また心臓が高鳴った。
もしかしたら、彼の心臓が音を立てていた様な気がしたのは
私が自分の心臓の音と勘違いしたからなのかも。
そう思うと、今度は顔が熱くなってきた。
これから晩ご飯なのに！
早く落ち着かないと追求されちゃうよ！