初恋とココア【黒羽快斗】

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二人してビニール袋を手から提げ、快斗の家へ歩いて向かう。


「……天気いいね」


無言で歩く道のりはとても長く、話題も少なかった。



家に着くと見慣れた家具が部屋中に並んでいた。


快斗の穏やかでいい匂いがするこの部屋は、まるで彼に抱きしめられているような気分になる。



「それで、あの事だけど」


「……うん」


「本当に勘違いなんだ」



困ったように眉を下げて笑う顔を見たら何も言えなくなってしまった。



「もしAがアレを見たんなら、ごめん」



後頭部を見せて謝る快斗。


ごめんって……つまり、本当にキスしてたってこと？



その言葉は喉まで出かかっていたのに、快斗の目が私に口を開かせなかった。



「あの時………Aがトイレに行った時。実は、青子に告白されたんだ」


「え……っ？前から浮気してたんじゃ」


「んな訳ないだろ。俺はそんな奴に見えてたのか……？」



いやまあしょうがないよな、と笑って快斗は話を続けた。



「でも俺はAが好きだし、別れるつもりはないからって振ったんだ。青子も納得してくれた、んだけど」


そこで言葉を切り、少し言いずらそうに目を逸らす快斗。


一向に口を開く気配が無いので耐えられずにこちらから沈黙を破った。



「……振ったけど青子ちゃんが可哀想になってキスしたと？」


自分でもこんな言い方しなくてもいいのにと思うし、反省してる。


でも、どうしても今の私にはトゲのある言い方しかできなかったのだ。




……すると快斗は観念したように小さくため息をついてポツリと言葉を零した。



「青子にお願いされたんだ。最後にキスだけさせてくれって」









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