アンジュ・エ・デモン

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家の最寄駅に着いたのは23時を越えてしまっていた。






駅から歩いて5分程度とはいえ、この時間の一人歩きは若干の不安はもちろん感じる。


あーあ、こんな時彼氏がいたら電話しながら帰って寂しくもないし怖くもないんだけどなー…






……例えば、藤井さんとか。






うへ、やば。
また勝手に想像してしまった。









「何ニヤけてんねん」



「きゃーーーーーーっっ！！！」








妄想真っ只中で突然声をかけられて、驚きすぎて思わず発狂する。





目の前にはコンビニの袋をぶら下げた重岡くんが不審そうな顔をしてこっちを見てる。









「別に、ニヤけてなんかないけど」



「ほんま？結構怖かったで」



「ほんとだし……。何してるの？こんな時間に買い物？」



「おん、ちょっと小腹空いて。そっちは今帰り？」



「うん、まぁ」



「営業の飲み会って長いんやな。こんな時間まで」



「課長飲み好きだしね。でも二軒め移動してるから、こんなもんじゃない？」








昨夜のツンケンした態度とは一転、いつも通りの重岡くんだ。




自然と家までの道を並んで歩いていると、さっきまで感じていた夜道への不安も全く感じないし安心感。








「危なない？こんな時間に1人でさ。仮にも女やろ」



「そうだけど…この距離でタクシーも嫌がられるじゃん」



「今日はまともやけど、この前みたいな…」







あ、この流れ真実を聞き出せそう。


だけどそう思ったのが伝わったみたいで、重岡くんは黙っちゃった。








「ねぇ、重岡くん…
「月」



「え…月？」



「満月なんかな、今夜。いつもよりデカい気がする」



「…スーパームーンって言うんだよ。いつもより大きく見える月」



「へー…」







なんか、ちょっと調子狂うんだけど。



なんかいつもより







なんかちょっとだけだけど






意識してるのか、お酒のせいなのか





ドキドキしてるのは何でだろう。








多分、お酒のせいだよね。

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