第34話 ページ34
『ソニック！！』
考えるより先に、アリスは彼の名前を呼ぶ。
彼には、アリスが何を言わんとしていたのかが自分を呼ぶ声だけで分かったらしい。その証拠に、初めて会った時のような不敵な笑みを浮かべていた。
アリスはその表情に見とれるまま、彼の残像を追う。
「離せと言うのに、このっ！！」
「わ、そんなぁ─────っ！」
『……！！』
振り返れば、とうとう振り払われて地上へ落ちていくクリス。しかしカオスエメラルドをしっかりと握りしめて離さない。重力に逆えず悲鳴をあげて真っ逆さまの彼を、アリスは心臓が止まりそうな気さえ起こしたが一陣の風に願いを託して見守った。
その瞬間、万物をも凌駕するスピードで現れた青い影が、クリスをしっかりと抱きとめる。
そのまま遠ざかっていく2人を見えなくなるまで見送ったアリスは、安堵のため息をついた。胸を撫で下ろす彼女の手元には、ネックレスのリングが未だ微かな光を帯びていた。
＊
『クリス……頼むからもうあんな無茶しないで……』
「ご、ごめんなさい……」
何とか痛む足を引き摺り帰宅したアリスは、傷一つないクリスを見るなり泣きそうな表情で脇目も振らずに抱き締めた。傷だらけの足の包帯は、家に入ってすぐに彼女を見つけたエラが青ざめながら巻いたものだった。
坂道で転んだ、と何とか丸め込んだアリスにエラは無論｢無茶なさらないで下さい！！｣と叱責。それを受けたアリスは今、クリスに同じセリフを使っている。滑稽な光景だった。
『にしてもあれがエッグマン！？ただのヒゲオヤジじゃない、期待して損したわ！！』
「アイツに何を期待してたのよ」
『もうちょっと変わった、卵の怪人みたいな……』
「それ名前だけで判断したでしょう？」
チャックとテイルスが話している間、アリスはエミーの冷たいツッコミを受ける。図星をつかれた彼女はへらりと笑った。
クリスはそんなアリスの腕から解放されると、窓際の特等席に座るソニックの元へ歩み寄り、申し訳なさそうに口を開いた。
「……ごめんね」
「何で謝るんだ？」
「その、心配……」
「ぜーんぜん！一番心配してたのはアリスだしな。
それよりクリス、カッコよかったぜ？」
自分を助けてくれた、自分より何倍もカッコいい存在にそう言われてサムズアップを向けられたクリス。彼は祖父や姉、テイルス達から視線を受けながら、手元で光るカオスエメラルドを見て頬を染めたのだった。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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