第29話 ページ29
『宜しくね、……えーと』
「ダンだよ。もしかして人の名前覚えるの苦手？意外だな」
「あんな胡散臭い奴なんかに顔面で負けてたまるかっての！」
顔面うんたらは置いといて。オスカーが言っていた｢胡散臭い｣という読みは当たっているかもしれない……と必要以上に握られている手を見ながらアリスは思った。そんな彼女に構わずダンは話を進める。
「ところでさ、アリスは何色が好き？」
『え……？』
「唐突でゴメン。ボク、心理テストが好きでさ！好きな色を1つ上げてみて」
本当に唐突だった。で、何色が好き？となおも興味津々に聞いてくるダンに、アリスは首を捻る。色、色、色。考え込むほど浮かばないものだ。
答えに困ったアリスはふと窓を見る。外には雲ひとつない快晴が広がっていた。
『青、かしら』
「青ね。うん、そんな感じがする」
『そう？』
「君の目も、綺麗な青色だしね」
顔を近付けてアリスの目の中の海色の瞳を覗き込んだダン。そういって笑う彼の瞳は、星一つない夜空のような漆黒だった。いたたまれず目を逸らした瞬間、ドアが勢いよく開く。見慣れた男が駆け足で入ってきた。
「忘れ物ー、っと……何だ、お前まだ居たのかよ」
『オスカー！』
「オスカーくん。こんにちは」
「ンだよ、編入生も一緒か。……おいアリス、これからサラとエリザも混ぜて飯行くけど、お前は？」
『わ、行きたい！……けど、』
早くこの場を逃れたいとは思っていたが、いざそうなるとダンを置いていくのも気がかりだ。アリスは彼を振り返るも、気にしないでと言わんばかりに片手を上げてまた“あの”笑顔を浮かべる。
「……私も行く！」
「なら急げよ。2人も待ってる」
『それじゃあね……えと、ダン！ 』
「合ってる合ってる。また明日ね」
アリスは荷物をまとめると足早に駆けていく。遅ぇよ、と言うオスカーに追いつくと、彼女は苦笑いで口を開いた。
『オスカー、ありがとう』
「は、はあ？」
『実はあそこから早く抜け出したくて。助かったわ』
「……ふーん」
いつもなら得意気になる所で声色を弱くしてそっぽを向いたオスカーに、最近のオスカーはおかしいな、と首を傾げるアリスだった。
＊
「理知的で誠実、控えめで内向的……。
お前にピッタリだな、アリス･ソーンダイク。
ついでに言うとお前が匿ってるハリネズミも青色。そうだろ？」
一人きりの教室で、ダンは不敵に笑っていた。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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