第17話 ページ17
side アリス
『え、？』
鋭い怒号とともに目の前で木っ端微塵となった瓦礫に、思わず目を見開く。目の前に現れた赤い彼の拳1つで、あんなに大きく重たいコンクリートは簡単に砕け散ってしまった。足の痛みも忘れ呆然としてしまう。彼は私をキッと睨みつけると叫んだ。
「いい加減にしろ！ダチを守りてぇ気持ちは分かる、だが自分の命を粗末にすんな！コイツが目覚めた時お前がいなかったら、コイツはどうなる！？」
赤い彼が勢いよく指さした方には、エリザが壁に寄りかかるようにして座っている。腫れた足を引き摺り、私の足を潰した瓦礫を退けようとしてくれた。瓦礫を頭に受けても、気を失うその瞬間まで私の名前を何度も呼んでくれた。そんな親友。
もし私なら、そんな存在を失うなんて。
勢いよく首を横に振った。
「……分かったんなら行くぞ」
『で、でも2人なんて抱えられ、うわあ！？』
エリザを簡単に持ち上げたと思えば、赤い彼はもう片方の腕で私の事も容易く持ち上げる。何というパワーだ、と感嘆する間もなく、彼は一気に駆け出した。
『お、重くないんですか！？』
「お前らより小さいからって、嘗めるなよ！」
それだけ言って口元に不敵な笑みを浮かべた彼の横顔から、私は目を離すことができなかった。
彼はあっという間に1階の壊れかけの出口を思い切り蹴破り、破損の少ない場所へと下ろしてくれた。
「後は自分でやれよ。オレは行く」
『あ、あの！貴方は、』
彼は振り返らないまま手を軽く振り、再び非常口へと駆けていく。アリスはその背が見えなくなるまでずっと見つめていた。
＊
「お、おい。あれエリザとアリスじゃ……！」
「ウソ、マジ！？2人共大丈夫！？」
『あ……オスカー、サラ……』
覗き込んでいた野次馬の中から掻い潜り出てきたのは、先程散々私を笑っていた2人。そんなさっきの様子と打って変わって血相を変えてこちらへ寄ってきた。
「バカお前ら、何でまだこんなとこに！」
「てかエリザ、生きてる！？」
『生きてるよ！だから救急車を……』
「呼ぶよりそこの病院行くのが速ぇだろ！行くぞ！」
「アンタも怪我してるんでしょ、ホラ乗って！」
エリザはオスカーに抱えられ、私はサラにおぶられて壊れかけのビルを脱出。途中で救急隊員と落ち合い病院へ運ばれ、無事奇跡の生還を果たせた。
しかしあの勇敢な救世主がいなければ、私達はどうなっていたか。
瞼の裏に焼き付いた、名前を聞き損ねた真紅の彼に、再会を願った。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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